2020/07/06

会社の設立には、資本金が必要となります。

現在は資本金1円からでも会社が設立できるようにはなりましたが、資本金は会社の体力とも呼ばれるように、経営や対外的な信用を左右するものでもあります。

そのため、決して「1円あれば会社ができる」というような甘いものではないのです。

今回は、会社を設立するために必要な資本金のことを解説していきます。

資本金とは

資本金とはその会社を運営するために資産の総額のことです。

この資本金は会社設立時の運転資金であり、会社に関わるもの全てに利用することができます。

資本金はどうして重要なの?

資本金が重要なのは、この資本金は外から確認できる「会社の信用力」の指標として扱われるからです。

この資金が少ないと、「会社がすぐ倒産するかもしれない」という印象を取引先に与えることになります。

会社を設立して1年以内に倒産する企業の原因として資本金が十分ではないというケースも少なくありません。

また資本金の額があまりに少ないと、金融機関の評価に影響し融資を受けるのが難しくなることも。

具体的には日本政策金融公庫の新創業融資制度では、自己資本要件が挙げられます。

創業資金総額の10分の1以上の自己資金が確認できないと融資を受けられません。

資本金の決め方

会社の資本金の平均額は、300万円ほどが一般的だとされています。

ただこれだけだとどうしてこのくらいの金額が多いのか、ピンとこない人もいますよね。

そんな方は、以下の2点から考えてみてください。

・3ヶ月から半年間耐えられるだけの金額で設定する
・取引先から信用されるくらいの金額を確保する

3ヶ月から半年間耐えられるだけの金額で設定する

資本金を決めるときには、3ヶ月から半年間売り上げがあげられなくても耐えられる運転資金の額を設定するのがおすすめです。

というのも会社設立からすぐは事業が軌道に乗らない、ということもめずらしくないから。

そんなときに資本金が足りずに倒産するというケースは少なからずあります。

「どのくらいの出費があるのか計算方法がわからない」という人もいるかと思います。

以下の点を踏まえて計算してみてください。

・オフィスの家賃、改装工事に必要なお金
・通信設備やPCにかかる費用
・机、椅子、事務用品など必要な部品
・ホームページやパンフレットなど最低限必要な広告費用
・従業員を雇う場合の給料
・小売業の場合、仕入れにかかる費用

取引先から信用されるくらいの金額を確保する

資本金の金額を決めるときの一つの指標としては、取引先から信頼されるのに十分な資本金を設定することです。

目安としては、300万円から500万円程度の資本金を確保しておけば、取引先や企業からの信用を得やすくなります。

資本金が少ないとデメリットが大きい

資本金は最低金額が設定されていないため、1円からであっても会社を設立できます。

個人事業主で従業員がいないとしても、問題なく申請可能です。

制度上は問題ないものの、資本金が少ないのはデメリットが大きくおすすめできません。

資本金の追加を行うこともできますが、登録免許税が必要になり、増加する資本の1000分の7または、最低額3万円の費用がかかってしまいます。

またこの手続きを行うためには、司法書士などに依頼する必要があるので、その分の費用も必要です。

こうした点から考えると、増資はお金の無駄が生じやすいため、最初の段階でしっかりとした資本金を準備することが重要になります。

あとあと後悔しないためにも、ここでしっかりと資本金の決め方を理解しましょう。

資本金はいくらにするのがいい?

「資本金はどのくらいの金額で設定すればよいの?」ということが気になる人も多いのではないでしょうか。

ここでは資本金を具体的に決めるポイントを以下の点から見ていきましょう。

・旧商法における資本金から決める
・消費税免税を受けるなら1000万円以下に設定する
・許認可事業の場合には最低資本金額を意識する

旧商法における資本金から決める

旧商法における資本金の金額から考えるのも一つの手段です。

旧商法から平成18年に新会社法が制定されたときに、会社は資本金1円からでも設立できるようになりました。

それ以前の旧商法では、以下のように会社設立の際の資本金の最低資本金額が定められていました。

旧商法の最低資本金額
株式会社 1000万円
有限会社 300万円

300万円以上で資本金を設定しておくと、設立時の運転資金として十分な資本を確保できるほか、金融機関から融資で不利になることはなくなります。

消費税免税を受けるなら1000万円以下に設定する

資本金を1000万円以下にすると、設立1期目と2期目の消費税の納税を免除されます。

さらに資本金1億円以下という条件を満たすと、法人税率の一部軽減も認められます。

所得の金額の800万円までは、軽減税率である15%が適用されるように。

これらの点から考えても、資本金は多ければ多いほどよいというものでもありません。

節税効果を期待するのであれば、資本金は1000万円以下に設定しておきましょう。

1000万円以上で法人住民税の均等割りが発生

もし1000万円を超えた資本金を設定すると、法人住民税の均等割の納税額が増加します。

法人住民税の均等割とは、赤字か黒字かに関わらず納税しなければいけない税金のことです。

具体的な金額はその地方自治体によって異なります。
例えば大阪の堺にある法人の場合には、以下の通りです。

ケーススタディ:大阪府堺市の法人の場合
1000万円以下の資本金 大阪府に20,000円、堺市に50,000円、計70,000円
1000万円超えの資本金 大阪府に75,000円、堺市に130,000円、計205,000円

ここで見るだけでも135,000も納税額に違いが現れます。

これに加えて消費税の納税もあるので、長い目で見ると無駄な税金コストが大きいのがお分かりいただけるのではないでしょうか

税制面で余分な税金を納めたくないのであれば、1000万円以下に設定しておくのが間違いありません。

許認可事業の場合には最低資本金額を意識する

原則として、資本金は1円からでも会社を設立できますが、許認可事業の場合には許認可を受ける条件として資本金が設定されているものもあります。

例えば以下のものがそれに該当します。

許認可事業の最低資本金額
一般建設業 500万円
有料職業紹介事業 500万円
一般労働者派遣事業 2000万円
第一種旅行業 3000万円

許認可が必要な事業の場合には、必ず許認可を受ける前に、要件を確認しておきましょう。

一度資本金を設定してしまうと、変更するときに余分な費用がかかってしまいます。

資本金の支払い方法

資本金を支払う実際の手順は以下の通りです。

①発起人の銀行口座を用意し、そこに資本金を振り込む
②通帳コピーの用意
③払込証明書を準備する
④法人設立後、法人口座に資本金を移す

①発起人の銀行口座を用意し、そこに資本金を振り込む

発起人の銀行口座を準備し、まずはそこに資本金を振り込みましょう。

資本金を振り込む時点では法人設立を認められていないため、まずは発起人の口座に資本金をプールします。

もし発起人が複数人いる場合でも、代表の人一人の個人口座に集めれば問題ありません。

この口座は普段使っている銀行口座で大丈夫です。

また発起人が一人である場合には、資本金を預け入れるでも問題ありませんが、複数いる場合には、発起人全員の名前が確認できるよう振り込みでなければいけません。

②通帳コピーの用意

資本金の振り込みが終わったら、次に通帳のコピーを用意しましょう。

・表紙の裏表(銀行名・支店・銀行印が確認できる場所)
・資本金の振り込みが記載されたページ

コピー用紙には特に規定はありませんが、振り込み内容が確認しやすいよう、資本金に該当する部分にマーカーで印をつけておいてください。

ネット銀行の場合はページをコピー

ネット銀行で通帳がない場合、以下の項目が記載されているページを印刷すれば問題ありません。

・振り込み日
・口座名義人
・口座番号
・取引銀行情報
・振込金額
・振り込み人名義

③払込証明書を準備する

次に払込証明書を準備しましょう。

払込証明書とは、発起人から会社に資本金が払込まれたことを証明する書類のことです。

以前は金融機関から発行してもらう必要があったのですが、現在では全て自分で準備して作成できるため、意外と難しくありません。

具体的な手順は以下の通りです。

・表紙に必要事項を記載
・通帳のコピーをホッチキスでとめる
・各ページに印鑑(会社代表印)を押す

表紙に記載する必要事項は以下の通りです。

・タイトルは払込証明書(上部に印鑑押印)
・払込があった金額の総額
・設立時発行株式数の記載(株式会社の場合)
・書類の作成日
・会社の所在と商号
・代表者の氏名(押印)
・(捨印)

これで払込証明書の準備は完了です。

ただし、これは発起人設立で会社を設立した場合になります。

発起人設立とは、発起人だけが株主になる会社の設立方法です。

これに対して、複数の株主を募集して設立することを募集設立と言います。

手続きが複雑なため、現在あまり使われているわけではありませんが、もし該当する場合には、金融機関から、払込金額保管証明書を発行してもらわなければいけません。

④法人設立後、法人口座に資本金を移す

法人の設立が完了したら、法人口座が作成できるようになりますので、口座が作成でき次第、資本金を法人口座に移しましょう。

資本金の集め方

「資本金はある程度準備しなければいけないのはわかったけれど、それだけの資本金をどう集めたらいいの?」という人もいるのではないでしょうか。

ここでは資本金をどうやって準備するのか、具体的な方法について見ていきましょう。

理想は自己資本100%でまかなうこと

資本金はできるだけ自己資本100%でまかなうのが理想です。

・貯金
・退職金
・生命保険の解約

上記の方法をできるだけ活用し、資本金を確保するようにしましょう。

自己資本が多いほど融資も受けやすい

「自己資本100%での準備は難しい」という人も当然いるかとは思います。

ですが、資本金を自己資本でまかなうことが後々の資金繰りで重要になってきます。

というのも、自己資本で用意できているお金が多いほど、銀行からの融資が受けやすくなるからです。

みなし自己資本や現物出資を活用する

みなし自己資本や現物出資を資本金として使う方法もあります。

みなし自己資本とは、会社設立のために使ったお金の一部を資本金として認めてもらう方法のことです。

会社の設立初期は初期投資が多くなりますし、手元に現金を準備すると言っても難しい、そんなときにおすすめの方法になります。

実際には使われていますので、手元にお金はなくとも、資本金として認めてもらえる可能性は十分にあるでしょう。

現物出資とは、会社の資産の一部を資本金として計上することです。

具体的には以下のものがあります。

・車
・パソコンやオフィスで使う機材
・有価証券
・ゴルフの会員権など
・不動産

これらのものを資本金として計上できれば、現金を使うことなく資本金を増やすことが可能になります。

品目が多すぎると、会計処理が複雑になるため、ある程度金額が大きいものを現物出資するようにした方が、後々の手間がかからなくなります。

現物出資の不足額は自分でカバーする

ただし、現物出資で不足額があった場合には、発起人がその分を負担しなければいけないことには注意が必要です。

例えば、100万円で計上した中古車の実際の査定額が50万円だった、という場合には会社に対して発起人が50万円負担しなければいけなくなります。

会社に必要なものでなければアウト

みなし自己資本と現物出資、どちらの方法でも、「会社のために必要なものだった」ということを認めてもらわなければいけません。

・客観的にその金額を証明できるか
・事業への必要性を証明できるか

上記の2点を説明できる資料を準備しておきましょう。

金融機関から借りたお金は資本金にはできない

金融機関、また親や友人から借りたお金は資本金にはできません。

借りるのではなく、友人や家族からもらったお金はNGではないのですが、自己資本として認められないことも少なくありません。

そのお金が本当にもらったのか、借りたものなのか証明する方法が難しいからです。

これを「もらった」と偽って資本金にすることはできません。

見せ金行為とみなされ、違法行為になってしまいます。

見せ金とは

見せ金とは、実際に存在する以上の資本金があるように見せかける行為のことです。

公正証書原本不実記載罪に問われ、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処させる可能性があります。

こうした点から金融機関、または家族や友人から借りたお金を資本金にはできないため、注意しましょう。

資本金はすぐに使える?

資本金は会社で必要なものであれば、自由に利用できるお金です。

とはいえ、いつから使えるのかわからないと不安になりますよね。

ここでは以下の点について見ていきましょう。

・資本金は資本金として振り込みが完了したときから利用可能
・資本金が不足した場合の対処法

資本金は資本金として振り込みが完了したときから利用可能

資本金は個人の口座に資本金として振り込みが完了した直後から利用できます

「会社設立までは利用できない」

「法人口座を作るまでは利用できない」

そう考えられがちですが、そうではありません。

新会社法が施行される前までは、会社設立から2週間〜1ヶ月は資本金を利用できませんでした。

資本金の払込証明書の作成が銀行でしかできず、その作成が終わるまでは引き出すことができなかったからです。

この新会社法が施行されたことにより、資本金を振り込んだ項目のコピーがあれば、個人で払込証明書を作成できるようになりました。

そのめ、資本金の振り込みが終わってさえいれば、資本金を使っても手続き上問題ありません

この場合、法人口座への振り込みは資本金の残額を振り込みます。

使った経費の領収書や明細はきちんと保存しておかなければいけません。

資本金が不足した場合の対処法

会社設立して間もないときにはどうしても資本金が不足しがちです。

そんな場合の対処法は以下のものがあります。

・役員仮払金を使う
・DES(debt・equity・swap)
・ビジネスローンでつなぎ融資を活用する

役員仮払金を使う

役員仮払金とは、会社の役員が会社に対してお金を貸し付けたお金のことです。

もっとわかりやすく言えば、個人のポケットマネーを会社の運用資金に充てることだと考えてよいでしょう。

会社の立場で考えたときに金利なしでも資金調達ができるのがメリットです。

ただし、金融機関からの評価は下がるのには注意しましょう。

この役員仮払金を利用するときには、いつまでに変換できるのか、その見込みがたっている状態で利用しましょう。

DES(debt equity swap)

DES(debt equity swap)とは、会社の債務を株式にすることです。

このDESを実施することで、債務を資産にすることができ、財務内容の改善を図れます。

ただし、株式が非公開になっている場合、株式の評価と処分が極めて難しくなる点がデメリットです。

ビジネスローンでつなぎ融資を活用する

ビジネスローンを使ってつなぎ融資をするのも選択肢です。

つなぎ融資とは、資金調達の目処は立っているにも関わらず、入金までの時間が長いため、その間のお金を補填するために使われます。

ビジネスローンとは、事業者を対象にしたローンです。

中には担保や保証人を必要としないものも。

またビジネスローンがつなぎ融資におすすめなのは以下の理由があります。

・最短即日で審査ができる
・最短即日、3営業日以内で融資をもらえる

こうした理由からビジネスローンは特につなぎ融資におすすめできると言えます。

もし資本金が不足している場合でも以上のような手段で資金調達できる場合がありますので、活用してください。

まとめ

名は体を表すと言うように、資本金は会社を表すと覚えておいてください。

とは言っても、多ければ多いほどいいというわけでもありません。

当面の運転資金としていくら必要なのか、税金対策を考えていくらまでに抑えるべきなのかなどを考慮して決定するようにしましょう。

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