本選びのプロ6人に選んでもらった!オススメの本を一挙紹介
「京都書店めぐり」の企画では、様々な書店にインタビューをさせていただきました。
今回は、今までインタビューさせていただいた書店員のかたにオススメいただいた本を紹介していきます。
書店をめぐる今回の企画ではインタビューの最後にインタビュアーのプロフィールを提示し、オススメの本を1冊選んでいただいていました。
インタビュアー「マル」のプロフィールは以下の通りです。
・大学2回生
・漫画が好き
・本が好きだが、文学に詳しくはない。
・幸せとは?働くとは?といったことに興味がある。
今までインタビューさせていただいた書店は、こちらです。
●恵文社一乗寺店(京都市左京区)
●三月書房(京都市中京区)
●京都マルイ期間限定ショップ(京都市下京区)
●レティシア書房(京都市中京区)
●本屋Title(東京都杉並区)
恵文社一乗寺店 鎌田裕樹さん オススメ
『坐禅は心の安楽死』横尾忠則
最初にインタビューをさせていただいたのは恵文社一乗寺店さん。
初めてのインタビューだったので緊張して、たどたどしいインタビューになってしまいましたが、恵文社の書店マネージャーを務める鎌田裕樹さんは気さくに受け答えしてくださり、とても嬉しかったのを覚えています。
私のプロフィールを提示しオススメの本をお願いすると、鎌田さんは1冊の本をオススメしてくださいました。
オススメいただいたのは、横尾忠則著『坐禅は心の安楽死』(平凡社)です。
私が漫画を描いているということもあり、芸術家の横尾忠則氏の著書をご紹介いただきました。
横尾氏は以前に漫画を描いていたこともあるそうです。
私が漫画を描いていることもあり、漫画と関係のある著者の本をご紹介いただき、その心遣いが嬉しかったです。
以下は以前のインタビューでの鎌田さんの言葉です。
“僕も座禅の修行に行ったことが実は1ヶ月だけあって。
そのときに言われたのが「足る」を知れってことだったんです。
足りてることを知りなさいっていうのを言われて。”
鎌田さんが実際に座禅の修業に行かれたと聞いて、私は驚きました。
そのときに「足る」を知れと言われたのだそうです。
“今何でもできるのに実はやってないっていうのをすごい気づく毎日で。
足りてることがわかると自分に足りないものが逆に見えてくる。”
“逆に欲しているばかりだと得られないものもある。
自分に今何があるっていうのを一回見つめ直してみると色々見えてくることもあると思います。”
「足る」を知ること、自分に何があるかを見つめ直すことで見えてくるものがあるのではないかと仰る鎌田さんの言葉が印象的でした。
今回オススメいただいた『坐禅は心の安楽死』を読んでみると、著者である横尾氏の座禅体験が詳細に伝えられていると感じました。
座禅を通して感じたことも率直に伝えられており、座禅とは厳しいものなのだなと感じました。
率直な言葉で綴られる体験談が面白く、著者の思索もとても興味深かったです。
≫【前編】「恵文社一乗寺店」 若き書店マネージャー 鎌田裕樹さんが目指す恵文社の新しいカタチ
≫【後編】「恵文社一乗寺店」 若き書店マネージャー 鎌田裕樹さんが目指す恵文社の新しいカタチ
三月書房 宍戸立夫さん オススメ
『京都トカイナカ暮らし』グレゴリ青山
次にインタビューさせていただいたのは三月書房さん。
店主の宍戸さんが「自分は人に本をすすめたりはしないんやけど。」と仰っていました。
それでも何か1冊教えてくださいとお願いして、「それならこんな本もあるよ。」とご紹介いただいたのが、グレゴリ青山著『京都トカイナカ暮らし』というコミックエッセイです。
私が漫画好きということからこの本を紹介してくださったのではないかと思います。
この本では都会暮らしから京都に戻ってきた著者のグレゴリ青山さんが京都の様々な穴場的スポットを紹介しています。
この漫画の中では三月書房もとりあげられており、「いけず」なキャラとして描かれる宍戸さんの姿が面白かったです。
この本の著者であるグレゴリ青山さんと宍戸さんは以前から親交があったそうです。
ニジノ絵本屋 いしいあやさん オススメ
『とんと・くるる と ともだちくん うたいましょう』・
『とんと・くるる と ともだちくん はっけようい』みやさかえいいち
Montag Booksellers(モンターグ・ブックセラーズ)さんやTHE読書ズさんとともに、京都マルイの期間限定ショップを主催されたニジノ絵本屋さん。
ニジノ絵本屋代表のいしいさんにインタビューをさせていただき、オススメの本をご紹介いただきました。
オススメいただいたのはみやさかえいいち著『とんと・くるる と ともだちくん うたいましょう』・『とんと・くるる と ともだちくん はっけようい』(ニジノ絵本屋)という2冊の絵本です。
インタビュアーの私が漫画を描いていることにも絡めて、今回は児童漫画家さんの絵本をご紹介いただきました。
みやさかえいいちさんはずっと以前から絵本の挿絵や児童漫画の仕事をされていたかたでした。
みやさかさんは、文・絵を自分が担当するオリジナルの絵本を出したいという夢を88歳で叶えられました。
以下はニジノ絵本屋 いしいさんの言葉です。
“みやさかさんは88歳で自分の絵本をつくりたいという夢を叶えています。
やりたいこととか、叶えたいことには年齢は関係ないなっていうのを、私はこの絵本を作るなかで学びました。”
“ただ、歳をとっても夢を叶えられるから大丈夫!という意味ではありません。
夢の叶え時は、年齢ではなく叶えたいときだと思っています。
みやさかさんは88歳で自分の夢を叶えましたが、私たちはやりたいことをどんどん前倒しに行っていくべきだと思っています。
そのほうが叶えた夢の数も多くなると思いますし、若い人たちにもどんどん夢を叶えていってほしいです。”
「夢の叶え時は、年齢ではなく叶えたいとき」という、いしいさんの力強い言葉が印象的でした。
子どものころに親しんだ絵本という媒体ですが、思えば自分自身で絵本を購入したのは生まれて初めてだったかもしれないと思います。
絵本を読むというのも久しぶりでしたが、なんだか新鮮な気持ちがしました。
≫【期間限定】ここでしか出会えない本・絵本・雑貨が並ぶ書店。京都マルイにオープン!
Montag Booksellers 宮迫憲彦さん オススメ
『1984年』ジョージ・オーウェル
ニジノ絵本屋さんとともに京都マルイの期間限定ショップを主催されたMontag Booksellers(モンターグ・ブックセラーズ)さん。
このMontag Booksellersの店主と、THE読書ズの代表を兼任する宮迫憲彦さんにインタビューをさせていただき、オススメの本をご紹介いただきました。
オススメいただいた本はジョージ・オーウェル著『1984年』(ハヤカワepi文庫)です。
宮迫さんは、『1984年』をディストピア小説として紹介されました。
ディストピアとはユートピアの逆で、否定的でよくない未来を描く空想話のことです。
以下は宮迫さんの言葉です。
“トランプ政権になって、彼が大統領になることできっと未来は暗くなるんじゃないかってことが言われていますが、(『1984年』は)そういうトランプなどの独裁者みたいな人が権力をもったらどうなるかっていうのを書いた本なんですね。”
“今僕らって後に歴史で語られるような分岐点、変革期に生きているのかもしれないなっていうふうにちょっと思っていて。”
“自分の時代が歴史になるっていうのが感覚としてあまりもてないですよね。
でももしかしたらイギリスのEU離脱や、トランプが大統領に選ばれたという最近の出来事が20年後30年後くらいにも語られるような歴史的出来事になるんじゃないかなっていうのを会社の仲間と喋っていて。”
“予測できないようなことが起こる未来があって、その1つの一番極端なかたちっていうのがこの『1984年』という作品の中にあるなと思ってるんですね。”
後世の視点から見ると、トランプ氏が大統領になったことは歴史的な分岐点と呼ばれる出来事になるのかもしれません。
後に変革期と呼ばれるような時代に自分たちは今生きているのかもと考えることができますね。
また宮迫さんは、文学の役割として「起こってはいけないことをあらかじめ書くこと」を挙げられていました。
『1984年』はエンターテイメント作品としても面白いが、文学そのものちゃんとしたかたちでもこの作品があると述べられていた点が印象的でした。
≫【期間限定】ここでしか出会えない本・絵本・雑貨が並ぶ書店。京都マルイにオープン!
レティシア書房 小西徹さん オススメ
『本屋、はじめました』辻山良雄
『仕事文脈 vol.9 特集 ごはんと仕事』タバブックス
ミニプレス(少数部発行の出版物)や新刊本、古本を扱うレティシア書房さんでおすすめいただいたのは辻山良雄著『本屋、はじめました』(苦楽堂)とミニプレス『仕事文脈 vol.9 特集 ごはんと仕事』(タバブックス)です。
『本屋、はじめました』は、「本屋の取材をしているならこの本は面白いのでは。」と店主の小西さんがオススメしてくださいました。
『本屋、はじめました』は、大手書店を退職した著者の辻山さんが新刊書店「本屋Title(タイトル)」を立ち上げるまでの経緯が記された作品です。
この作品では新しく本屋を始めるまでの準備や心境がしっかりと描かれています。
巻末には「本屋Title」を始める上での事業計画書も添付されており、経費なども含めてお店の内側まで詳細に記されている点がとても印象的でした。
この本を読んだことで「本屋Title」に興味を抱き、「本屋Title」さんへ出張インタビューをすることを決めました。
ミニプレス『仕事文脈 vol.9 特集 ごはんと仕事』(タバブックス)は、私が仕事に対して興味があることからオススメしていただきました。
少数部発行であるミニプレスはお店に置いてある書店も少なく、あまり目にする機会がありません。
私はこのとき、初めてミニプレスを手にとりました。
『仕事文脈』を読むと、そこには豊富に写真が掲載され、エッセイや漫画など幅広いジャンルがまとまった冊子という印象を受けました。
また少ない人数でもしっかりと丁寧につくられた本であると感じました。
小数部発行のミニプレスはそれだけで希少性があるものだと思います。
≫全国のミニプレスが手に入る「レティシア書房」 今、本屋のあるべき姿とは?
本屋Title 辻山良雄さん オススメ
『自分の仕事をつくる』西村佳哲
京都書店めぐりの番外編として東京の本屋Title(タイトル)さんを取材しました。
先のレティシア書房さんで、『本屋、はじめました』という本を紹介していただいたことがきっかけで取材へ伺いました。
本屋Titleさんでオススメしていただいたのが『自分の仕事をつくる』という本です。
この本は仕事を「自分の仕事」にして働く人々の仕事場に著者が出向き、インタビューをしてまとめられたインタビュー集です。
またインタビューの後に添えられた著者の文章からも、「働くこと」に対する著者の実直な姿勢がうかがえます。
「仕事」「働きかた」に関心がある自分としては、とても面白い作品でした。
インタビュー中、本屋Title店主・辻山さんの「仕事は自分の人生の中で占める割合が大きい。」「(仕事は)自分で主体的にやるほうが面白い。」という言葉がとても印象的でした。
『自分の仕事をつくる』では、そういった主体的に働く人々の仕事に対する意識や取り組み方を知ることができる作品です。
この本を読むことで仕事に関する価値観も変わっていくのではないかと思いました。
またインタビューはアポなしで突然の訪問というかたちになったにも関わらず、気さくに答えてくださった辻山さんにとても感謝しています。
ありがとうございました。
≫東京・荻窪の「本屋Title」 店主・辻山さんに出張インタビュー【番外編】
編集後記
京都書店めぐりの企画では、インタビューさせていただいた書店にて様々な作品をオススメしていただきました。
私のプロフィールなどを考慮して、作品を選んでくださった書店員の皆さま、どうもありがとうございました。
本のプロのかたに本のオススメをしていただくというとても貴重な体験ができました。
また、ニジノ絵本屋 いしいさんもインタビューの中で仰っていましたが、だれかが薦めた本との出合いは素晴らしいものだと思います。
この度は素晴らしい本に出合えることができて嬉しかったです。
本当にありがとうございました。