東京・荻窪の「本屋Title」 店主・辻山さんに出張インタビュー【番外編】
この本をご存じでしょうか。
辻山良雄著『本屋、はじめました』(苦楽堂)という本です。
先のレティシア書房でのインタビューでご紹介いただき、私はこの本を読みました。
≫全国のミニプレスが手に入る「レティシア書房」 今、本屋のあるべき姿とは?
『本屋、はじめました』では大手書店を退職した著者が、東京・荻窪に「本屋Title(タイトル)」という新刊書店を構えるまでの経緯が事細かに記されています。
この本を読んで本屋Titleに興味を持ち、どうしてもお話を伺いたいと思いました。
この度東京へ行く用事もあったことから、荻窪に足を伸ばし出張インタビューを敢行しました。
京都書店めぐりという企画なのに、東京の本屋なの!?と思われたかたには申し訳ありません。
京都書店めぐりの「番外編」というかたちで記事を載せさせていただきました。
番外編なので、インタビューは今までの記事に比べて少し短めのものになっています。
また、今まではアポをとってから取材をしていましたが、今回は突然の訪問というかたちになりました。(大変失礼いたしました・・・)
実際にお店へ
東京駅から東京メトロ、丸の内線の荻窪行きに乗って30分超。
荻窪駅を出て、西へ向かいます。
10分ほど歩くと、お店が見つかりました。
お店へ伺うと、店主の辻山さんがいらっしゃいました。
取材をお願いすると、「少し待ってもらえれば大丈夫ですよ。」と言っていただき、店の奥に併設されたカフェでしばらく待つことにしました。
カフェにはカウンター席とテーブル席があります。
メニュー表がこちら。
うーん、迷う!
でも本当は心の中で決めていました。
『本屋、はじめました』の中にも紹介されている「boccaのカレリアンパイ」と、「Titleブレンド(深煎りコーヒー)」をチョイス。
パイはサクサクしていて美味しかったです。
にんじんは酸っぱい味付けが効いていて、とても良いアクセントになっていました。
コーヒーはしっかりした味がしました。
添えられた個包装の小さいクッキーが嬉しかったです。
そうこうしてるうちに、「もうインタビューしてもらっても大丈夫ですよー。」との声がかかりました。
ありがとうございます!
それでは、インタビュースタートです。
──本日は突然の訪問にも関わらずインタビューをさせていただき、ありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
辻山:よろしくお願いします。
★辻山 良雄(つじやま・よしお) Title店主
1972年神戸市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、㈱リブロ入社。中核店舗の店長を経て、池袋本店統括マネージャー。2015年7月同店閉店後退社後、 2016年1月10日、荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店Titleをオープン。『朝日新聞』などでの書評、カフェや美術館のブックセレクションも手掛ける。著書『本屋、はじめました』が苦楽堂より発売中。
本を書いたことで参考になる人がいれば
──『本屋、はじめました』を出版しようと思われたきっかけは何ですか?
辻山:直接のきっかけは「本を書いてみませんか」っていうお話があったことです。
この本は、本屋を開店して1年目で出たんですよね。
どちらかというと普通は何年もやって自分の経験を書くみたいな、そういうパターンが多いんですけど。
ただ、始めてみて1年だから書けることっていうのもあると思います。
この本で書いたことはあくまでも自分の事例ですが、参考になる人がいるかもしれないし、それだったら書いたほうがいいかなと思って書きました。
「本を書いてみませんか」って話があって、実際に本が出るっていうのは嬉しいことですね。
──すごく読みやすい文章でした。また、本の内容もとても面白かったです。
辻山:そうですか(笑)。ありがとうございます。
──本の内容としてはお店の経費だとか、本当にお店の内側のことも全て出している気がしました。
このような本を出した理由はありますか?
辻山:このような本にすることは、依頼をいただいた出版社と話し合いながら決めました。
この本にもちょっと書いてるんですけど、本屋って自分がやったから今こういう形になってると思います。
あの本を読んだとしても、もし他のかたが本屋をやったとしたらまた全然違うお店になると思うんですね。
お店にはその人の個性が出るから、全く同じものにはならないので。
はっきり言うと、数字とかは出しても出さなくても自分にとっては一緒のことなんです。
ただ、出したほうが色々と親切だし、本としては価値が高まったりだとかそういうのはあると思いますね。
──『本屋、はじめました』を出したことで新しく来られるお客さんはいましたか?
辻山:本自体がこの店のことばっかり書いてるからね(笑)。
本を読んで店に興味をもって、こちらに来られたかたも結構おられますね。
それはありがたい話ですね。
──このような取材は最近多いですか?
本の出版前と比べていかがでしょうか?
辻山:でも、あんまり変わらないですね。
去年は開店して1年の新しい店だったので雑誌などの取材が多くありました。
その去年に比べると今は落ち着いてきたのかもしれないです。
でも、今でも新聞社のかたが取材に来られたりとかは何回かありますね。
仕事はその人の人生の大部分を占めている
──仕事とプライベートのオン/オフの切り替えがあいまいになってきたということを『本屋、はじめました』の中で書いておられましたが、今もとても忙しい状況なんでしょうか?
辻山:そうですね。
例えば昨日一昨日と連休だったんですけど、関西のトークイベントに行っていたので、休みはないようなもんですね。
ただ、やっぱり好きでやってるようなことでもあります。
自分の仕事に満足感を得られなくてうつうつとしてらっしゃるかたもいるのかもしれないし、それとどっちがいいかっていったら分かんないですけど。
仕事ってその人の人生の結構な部分を占めてるし、やりたいようにやるのが一番じゃないですかね。
──最後にこれからの本屋さんのあるべき姿についてどう思われますか?
辻山:そういう大きい話は自分では特にないですね(笑)。
ここは小さいお店ですが、一方でジュンク堂みたいな大きい本屋もありますよね。
だからお客さんとしてそれは使い分ければいいと思います。
学校で使うような難しい本とかだと大きい書店じゃないと見つからないという話も聞きますし。
こういうお店は昔ながらという感じですね。
今までは単に入ってきたのをぽんって置いて、あとは勝手にお客さんが買っていかれるみたいなそういう雰囲気もありました。
でも、本を売るっていう商売だから、もっと接客だったり本を薦めたりとかそういう比率が今後は増えてくるのかなとも思います。
辻山:イベントとかもそうですし。
単純に物ばっかり売るんじゃなくて、その中にコミュニケーションがあったりだとかそういうパターンも増えてきましたね。
──書店をめぐる今回の企画では、いつもインタビューの最後におすすめの本を1冊選んでいただいています。
もしよろしければ、1冊おすすめの本を選んでいただいてもよろしいでしょうか?
辻山:どういう人が見るんですかね?
学生が多いのかな。
それじゃあね、この本はどうですか。
働き方研究家の西村佳哲さん著『自分の仕事をつくる』(ちくま文庫)という本です。
さっき、仕事は自分の人生の中で占める割合が大きいみたいな話をしましたけど。
今、いろんな働き方が増えてきてるんですよね。
昔みたいに大企業に入ったらそれで偉くなっていって、60過ぎて定年になって、あとは・・・っていう雰囲気じゃないと思うんですよ。
ただそうは言ってもこれから何かをして食べていかなきゃいけないし。
どちらかというと、自分で主体的にやるほうが面白いですよね。
この本は、そういった主体的に仕事をしている人に著者の西村さんがインタビューをして書いた本なんです。
こういう先達の人というか、自分で考えて仕事をつくっていった人の本っていうのを若いうちに読んでおくといいかもしれないです。
──本日は突然の訪問にも関わらず、取材をお受けいただき、ありがとうございました。
辻山:ありがとうございました。
編集後記
突然の訪問にも関わらず、気さくにインタビューに応じてくださった「本屋Title」店主の辻山さん。
本当にありがとうございました。
レティシア書房さんでご紹介いただいた『本屋、はじめました』を読んだことがきっかけでこの度インタビューをしましたが、本で読んだお店に実際に行くことができて、とてもわくわくした気持ちになりました。
実際に本の著者にお会いしてお話を伺うことができたのは、とても貴重な経験でした。
どうもありがとうございました。
おすすめいただいた本、『自分の仕事をつくる』も面白く読ませていただきました。
仕事を「自分の仕事」にした人々へのインタビューから、働く上での実直な姿勢を学ぶことができました。
また、著者の西村さんがそれぞれのインタビューの後に書かれている思索もしっかりと考えられていると思いました。
仕事とは、働き方とは、など色々と考えさせられる内容で、仕事について興味がある自分としてはとても面白く読むことができる本でした。
今回のインタビューで店主の辻山さんも仰っていましたが、仕事は自分の人生の大部分を占めるものです。
この『自分の仕事をつくる』を読んで、仕事の取り組み方や考え方にしっかりと向き合うことは、人生において重要なテーマであると再認識することができました。
本屋Titleではインタビューが終わったあと、店主の辻山さんにサインをお願いしました。
『本屋、はじめました』の中表紙にサインとメッセージを書いていただき、とても嬉しかったです。
この度はどうもありがとうございました。
★本屋Title(タイトル)
場所:〒167-0034 東京都杉並区桃井1丁目5−2
営業時間:12:00~21:00 (CAFEのL.O.20:00/毎週水曜、第3火曜・定休)