ひとを巻きこみ、ファンを育て、SNSを駆使する25歳の焼き芋屋「竹村の焼き芋研究所。」
こんにちは!
すっかり春ですね。
先日までダウンを着ていたのに、気がつけばあっという間に暖かくなる。
スプリングコートの寿命って桜の花と同じくらい短いですよね。
さて、「季節労働」という言葉を知っていますか?
雪の多い地域では、冬になると積雪により外での作業ができなくなり、別の地域に出稼ぎにでて働いていたそうです。
例えば、農家さんが冬になると畑作業ができなくなるので、酒蔵でお酒造りをしていたとか。
豪雪地帯ではない京都にも季節労働をしている25歳の若者がいます。
とはいっても、夏に野菜をつくったり、冬にお酒をつくっているわけではありません。
彼の名は「竹村知紘(たけむらともひろ)」。
「移動する竹村商店」という屋号で、夏はかき氷を、秋冬は焼き芋を売るという商いをしています。
秋冬に営業している焼き芋屋さんの名前は「竹村の焼き芋研究所。」
Twitterを使って居場所をリアルタイムで発信し集客をする、今までにないスタイルの焼き芋屋さん。
テレビやラジオにも度々登場する人気っぷりです。
今回は助手席に乗らせてもらい、焼き芋屋さんの仕事を見学させてもらいました。
焼き芋屋さんの1日がスタート
――よろしくお願いします! 今は16時過ぎですが、いつもこの時間からスタートですか?
竹村:よろしくお願いします! 今日は大阪に仕入れに行っていたので、ちょっと遅めですね。
休日はもう少し早くから始めることもあります。
――ちなみに今日はどんなスケジュールでしょうか?
竹村:まずは、八百屋さんに焼き芋を配達します。
その後は、新しくなったこの「焼き芋屋さん号」のパーツを補強するためにとある工房に向かいます。
そのあとは街をゆっくりとまわる、皆さんが一般的にイメージする焼き芋屋さんの営業をします。
竹村:今日は工房に行くのでちょっと特別な日ですね。
まずは八百屋さんへ向かいましょう。
――配達ってよくされるんですか?
竹村:おかげさまで配達も多くなってきました。
焼き芋屋にとっては配達先が常連さんになるので、定期的に注文してもらえるのは嬉しいですね。
竹村:あとはイベントへの配達も今年は多かったですし、Twitterを使って現在地をツイートしているので、近くのかたから配達依頼のメッセージをいただいくこともあります。
【只今の焼き芋屋さんスポット】 pic.twitter.com/vjL0V0FPE3
— 竹村の焼き芋屋研究所。→移動する竹村商店 (@take_yakiimo) 2017年4月10日
竹村:Twitterで居場所がわかる焼き芋屋さんはほとんどいないのでは?
これが焼き芋屋さんの最先端です。
焼き芋屋さんってもっといろんな可能性があると思うんです。
今までのやり方だけじゃなくて、僕みたいな若者だからこそのやり方が。
八百屋さんに到着。
焼き芋を箱に詰め込んで持っていきます。
八百屋のお客さん:いい匂いですね。
竹村:温めなおしても美味しいですし、このお芋は冷たくても美味しいですよ!
お客様にあわせた芋の焼き加減
次は常連さんのところに向かいます。
――よく注文されるんですか?
常連さん:そうですね。
注文もしますし、焼き芋いりませんかっていう営業が来ることもあります笑
ちょっと前までは一番の常連だったと思いますが、最近は彼も人気なので。
常連さん:ただ、焼き芋は本当に美味しいんですよ。Twitterをみて、友達と追いかけたこともあります。
もう、焼き芋チケットも残り一枚になってしまいました。
――焼き芋チケット?
常連さん:クラウドファンディングに挑戦したときのリターンで、一番最初につくったチケットだそうです。
このチケットにはまだ切込みがないんです。
あ、「ぶよぶよちゃん」ありますか?
――ぶよぶよちゃん!?
常連さん:めっちゃ柔らかい焼き芋があるんですよ。
それが好きで。
竹村:常連さんによってはぶよぶよの柔らかいのが好きなひともいれば、かためが好きなかたもいるんです。
焼き芋の焼き方は師匠からじっくりと教わったので、どんな焼き方でも対応できます。
クラウドファンディングに挑戦
竹村:次は工房にむかいますね。
クラウドファンディングで集めた資金を使って「焼き芋屋さん号」を新しくしたんですけど、煙突にちょっと問題がありまして・・・。
――先ほどの常連さんも「クラウドファンディング」のリターンで焼き芋のチケットをもらったと。
どんなクラウドファンディングだったんですか?
竹村:この焼き芋屋さん号の改修ですね。
師匠から譲り受けたんですけど、結構古くて・・・。
いろいろ新しくする必要があったので、クラウドファンディングでその資金を調達しました。
――いくらぐらい集めたんですか?
竹村:およそ30万円です。
募集金額は15万円だったのですが、それがスタートして1週間ぐらいで集まって。
結果30万円が集まりました。
――すごい! めっちゃ応援されてますね。
どんな人が支援してくれたんですか?
竹村:ここ数年で知り合った方々にたくさん支援してもらいました。
ただ、大学時代の同級生とかは全然支援してくれなかったんですよね。あいつら・・・。
――どんな大学生活だったんですか?
竹村:ハタチのころは100人規模のサークルの代表をやってたんですよ。
今の僕からは想像できないと思いますけど。
1回生のころに、お菓子・料理サークル「きゃらめるクロワッサン」を立ち上げました。
1年間で100人規模になって。
――「きゃらめるクロワッサン」・・・ものすごく甘い名前。
竹村:この名前やばくないですか!?
「きゃらクロ」って略せるんです。
「きゃらクロ」といえばキャンパス内では誰でも知っているようなサークルだったんじゃないですかね。
――順風満帆なリア充大学生。
今の竹村さんからは想像できないですね笑
大学のベンチで寝ていたという話を聞いたことあったので、もっと過酷な生活をしてたかと。
竹村:そんなときもありましたね。
学生のときに起業しようとチャレンジしたこともあったんですけど、 いろいろと不運が重なって、家を失いました。
―― その過酷な話は「誰だって波瀾爆笑」に出演するときまでとっておいてください。
――クラウドファンディングをやってみて、どんな変化がありました?
竹村:ほんとにたくさんの人に支援していただいて、それは資金だけでなく、 デザイン、Tシャツなどなど、スキルを提供してくれるひともたくさんいました。
そんな皆様にはお礼として焼き芋をお渡ししています。
これが「芋払い」という焼き芋屋だからこその仕組みです。
――芋払い?
竹村:芋払い。お金ではなく、技術を提供してもらったお礼に、焼き芋を渡しているんです。
――原始時代みたいですね。
お支払いは芋払い!?
鉄工房へ向かいます。
竹村:クラウドファンディングで集まったお金を使って、焼き芋屋さん号をリニューアルし、ほかの焼き芋屋さんとは違う、新しいデザインにできたんですけど、かわりに不便になってしまったり、専門的な修理が必要な部分もでてきてしまったり。
竹村:師匠から譲り受けた焼き芋屋さん号は本当に無駄がなくて、機能的だったことがわかりました。
さすが師匠です。
京都の街中からたった5分で山の中へ。
――すごいところに来ましたね・・・(対向車来たら終わりだな)。
竹村:ここでは焼き芋は売れそうにないですね・・・。
――・・・。
竹村:・・・。
工房に到着すると、職人らしき男たちがぞろぞろと集まり、あーだこーだと話し合い。
この煙突をうまいこと取り付けたいそうです。
工房のなかへ移動します。
どうやら解決策が見つかったようです。
鉄工房の職人:じゃぁ、材料費が2,000円で、あとは焼き芋で。
竹村:芋払い、ありがとうございます!
――でた! 芋払い!
鉄工房の職人:芋払いは前払いできんのか? 腹へって腹へって。
竹村:もちろんです! すぐにお持ちしますね。
できたてホカホカの焼き芋を職人さんたちに配りながら、焼き芋についてTEDのように作業台のうえでプレゼンする竹村さん。
――すごい、これが芋払い。本当に焼き芋と技術を交換してる・・・。
※材料費はちゃんと現金で支払います
工房を出ると外はすっかり真っ暗になっていました。
街中に戻ります。
失敗もすべてさらけだす
――竹村くんって、たくさんのファンがいるなぁと。
さっきの工房でも、竹村くんに職人さんを紹介してくれたかたが「芋払い」の交渉をしてくれていましたよね。
応援したくなる何かをもっているような気がします。
竹村:ありがとうございます。
いや、ほんとたくさんの人に応援してもらって嬉しいです。
――応援してもらうため、ファンを増やすために努力していることって何かありますか?
竹村:やりたいことを声にだすことです。
「●○がしたい!」「●○なことをしてくれるひといませんか?」とSNSで発信すると、助けてくれる人がいるんですよ。
焼き芋屋さんも、やってみたいと声に出してたら、焼き芋の師匠と出会ってこの「焼き芋屋さん号」を譲り受けることができました。
竹村:あとは、いろんな場(イベントなど)に顔をだすことです。
知らない人ばかりの場でも参加して、相手の印象に残るよう努力していますね。
その場にいるかいないか、というのは大きな差になります。
竹村:失敗もうまくいったことも全部発信するっていうのは意識しています。
失敗してもいいからやり切ることが大切です。
失敗したこともしっかり発信すれば、ちょっとした成功のときでも、マイナスからプラスへの振れ幅が大きくなるので、あたかも大成功しかたのようになります。
――失敗も成功も、すべてを発信する。
ふつうは失敗をさらけだすのは嫌がりますが、そこをオープンにすることが秘訣なんですね。
そういうのも全部SNSを通して周りのひとが見てて、どんどん応援したくなっちゃう。
なんかアイドルみたいですね。
山から戻り、商店街へ。
――いよいよ「いしやーきいもー♪」の営業ですか?
そうですね。商店街をまわろうと思います。
助手席の足元には「いーしやーきいもー♪」のカセットテープ。
――焼き芋屋さんをとめるときのポイントってありますか?
ぼくはあまり焼き芋屋さんをとめたことってなくて。
竹村:たしかに若い人は、焼き芋屋さんのとめかたが分からないというひとが多いですよね。
焼き芋屋さんはゆっくり走って、少し止まって。またゆっくり走って、少し止まって。
というのを繰り返しています。
本当は一箇所にとどまっていたいんですけど、大きな音をだしてますし、近隣のご迷惑にならないよう、短時間で移動します。
サイドミラーは常に気にしているので、車の後方から手を振ってもらえればだいたい気付きます。
――視野の広さが重要ですね。
商店街でゆっくりと走行しながらあの音を鳴らします。
「いしや~きいもお~」
すぐに親子がやってきました。
――お客さんは親子が多いですか?
竹村:場所にもよりますけど、住宅地だとお年寄りも多いですよ。 自分の家の近くではマダムたちに人気なんです笑
駅の周辺では仕事帰りのサラリーマンや、若者も買ってくれます。
竹村:小さい子どもから、お年寄りまで、焼き芋は幅広いひとに喜んでもらえます。
ロマンがありますよね。 焼き芋屋さんとして挑戦できることもまだまだたくさんあります。
――すでに次の展開が?
竹村:来期の目標は焼き芋屋さんチルドレンを増やすことです。
2020年までに日本にきた海外からの旅行者に「YAKI-IMO」を広めます。
「Sweet Potato」ではなく「YAKI-IMO」です!
2020年が終わったら、だれかに引き継いで、ぼくは海外で焼き芋屋さんをしたいですね。
そのためにも焼き芋屋さんをスタバの店員さんと同じくらいかっこいい仕事にしてみせます。
――壮大ですね。
ちなみに、秋と冬は焼き芋屋さん、夏はかき氷屋さんをされていますが、これからの春シーズンは何を?
竹村:・・・。
どうしましょうね。
商店街をゆっくり走る焼き芋屋さんには絶えずお客さんがやってきて、その光景はどこか懐かしい日本の冬を象徴するシーンでした。
この冬はたくさん焼き芋を食べたなあ。
竹村の焼き芋研究所。(夏は「かき氷研究所。」)
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