はじめよう! 京都でコケ暮らし+「コケの皇居」下鴨神社【MUUSU京都版vol.1】
※MUUSU(ムース)は、京都で住まいを探すコケの方のための物件情報サイトです。
新緑の季節、コケの皆様はいかがお過ごしですか。
コケの胞子の方は、慣れ親しんだ蒴(さく)を飛び出し、コケとして「生す(むす)」にあたってお住まいを探していらっしゃる頃かと思います。
そんな胞子の皆様におすすめしたいのが、京都でのコケ暮らし。
苔寺(こけでら)とも呼ばれる西芳寺、「さざれ石の 巌(いわお)となりて 苔のむすまで」のさざれ石がある下鴨神社などは、ご存知の方も多いことでしょう。
有名なお寺や神社のほかにも、学校の庭や意外な街角に、素敵な物件はいっぱい。
この機会に、京都でのコケ生活を始めてみませんか。
コケとして生(む)していくにあたり、最も注意すべきは以下の2点です。
□日当たり
□水まわり
水分と日光は、光合成の大事な要素。
生きていくためのエネルギー、しっかり確保しましょうね。
日当たりについて
すみかといえば暗くてじめっとしたところ、というイメージの強いコケですが、他の植物と同じく日光は必要です。
では、日が当たれば当たるほどいいのかというと、そういう訳ではありません。
コケは、海から陸に上がった最初の植物から、もっとも古い時代に分岐した系統群だといわれています。
海をはなれた植物にとっての難題はなんでしょうか?
答えは乾燥です。
太陽光はエネルギーを与えると同時に、蒸発という形で水分を奪っていきます。
植物界で常識とされる光合成に、こんなジレンマがあるのですね。
水まわりについて
光合成をして養分をつくるには、水が必須です。
他の植物と異なり、からだを覆うクチクラ(キューティクル)をもたないコケは、体内に水を貯めておくことができません。
土中の水分を吸い取り全身に行きわたらせるための、根や維管束ももっていません。
乾燥してくると、からだをぎゅっと丸めて葉の表面積を小さくし、水を待ちます。
このように、周囲の水分量に伴って体内の水分量が変化する植物を、変水植物といいます。
クチクラという壁を表面につくるかわりに、コケはその小ささや細胞壁の工夫によって、雨や空気中の水分をとらえ、保持しようとします。
コケのすがたは、水の性質・ありようを映しているといえます。
雨上がりのコケ庭をご存知ですか。
コケと水の再会は、よろこびに満ちています。
よくある質問
根がなくて不安です。orなんで根がないの?
根がないと、はじめは戸惑いますよね。
コケの仮根(かこん)は、おもにからだを場所に固定するために使われています。
原始的な特徴をのこすコケのからだは、他の植物のように葉、茎、根とはっきり分かれているわけではありません。
コケ植物の区別として、しっかりとした茎葉(けいよう)体をもつ蘚(せん)類、茎葉体・葉状体のいりまじる苔(たい)類、ぺたりとした葉状体のツノゴケ類があります。
全身で水を吸収するコケのすがたには、独特の美しさがあります。
根がないからこそ、他の植物が生えられないアスファルトや石の上にも生(む)すことができるのです。
天敵はいますか?
虫に食べられるのはごめんですよね。
そんなときにはからだを苦くしましょう。
乾燥しきってしまいました……。
必ず生命活動をつづけなければならないと決まっているわけではありません。
いったん生命活動を止めてみましょう(休眠状態)。
98%の水分を失おうとも、雨が降ればまた復活できます。
われわれはどこから来てどこへ行くのか?
コケのあなたがどこから来てどこへ行くのか?
まず、どこから来たのかをお答えします。
コケは、他の植物のように種子で土から生えるわけではありません。
梅雨の季節に出会った卵と精子が成長して、蒴(さく)というものを伸ばします。
やがて蒴から飛び出した胞子は風に乗って、生きる場所をさがすのです。
舞い降りた場所が気に入ると、胞子は発芽し、ごく小さい糸状の原糸体になって地面に広がります。
あなたの行きたい場所はどこですか?
それが決まったら、コケの暮らしをスタートしましょう!
Vol.1の今回は、「コケの皇居」下鴨神社をご紹介いたします。
下鴨神社のさざれ石と糺の森
日本の国歌「君が代」に、コケがうたわれているのはご存知でしょうか。
「さざれ石の 巌(いわお)となりて 苔のむすまで」、この「さざれ石」が、京都市左京区の下鴨神社にあります。
コケとして、一度は訪れてみたい場所ですよね。
物件概要
□最寄駅:京阪電車出町柳駅
□日当たり:伸びやかな枝ぶりの木々に囲まれ、ほどよい日陰があります。
□水まわり:御手洗(みたらし)川、ならの小川、泉川、瀬見の小川という4つの小川が存在。
手水鉢も。
□コケ仲間の住まい
□ほかの住民:ほたる(夏)、馬(5月)
□下鴨神社HP:http://www.shimogamo-jinja.or.jp/
参考文献
秋山弘之(2002)『コケの手帳』研成社
ロビン・ウォール・キマラー(2012)『コケの自然誌』三木直子訳,築地書館
伊藤元己(2012)『新・生命科学シリーズ 植物の系統と進化』裳華房
寺島一郎(2013)『新・生命科学シリーズ 植物の生態 -生理機能を中心にー』裳華房
藤井久子(2011)『コケはともだち』秋山弘之監修,リトルモア
田中美穂(2007)『苔とあるく』WAVE出版
田中美穂・伊沢正名(2014)『ときめくコケ図鑑』山と渓谷社
左古文男(2016)『コケを見に行こう! 森の中にひっそり息づく緑のじゅうたん』樋口正信監修,技術評論社