法人カードとは、会社や個人事業主が事業に使うお金を決済するときに利用するクレジットカードの総称です。
法人カード最大のメリットは、事業資金の支払いを1つにまとめて、経費精算を簡単にできることです。
そのため法人カードの決済口座は会社の口座、つまり法人口座を指定するのが基本とされています。
ところが法人カードのなかには、決済口座に個人口座を指定できるものもあり、メリットを発揮する場合もあるのです。
自分の思い描く法人カードの使い方では、法人口座か個人口座のどちらを選択するほうがメリットが大きいのか知っておきたいですよね。
この記事では、法人カードの引き落とし口座に個人口座を指定するメリットとデメリットを解説していきます。
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cardmania -
クレジットカード会社に26年の勤務歴あり。
カード会社勤務時代は督促業務、カード審査も経験しました。
クレジットカード会社に勤務していた経験を活かして、
公式サイトでは語られない審査の裏側などをお伝えしていきます!
法人カードの引き落とし口座を個人口座にしてもいいのか
結論から言えば、法人カードのなかには個人口座を設定できるカードがあります。
ただし一般的に引き落とし口座は、法人口座が多いです。
それでは法人口座に設定する目的と、個人口座を指定できるケースを解説していきます。
引き落とし口座に法人口座を指定する目的
法人カードは、業務で使用する資金を管理するため、つまり事業経費を一括管理する目的で持ちます。
法人と個人の支払いを分けて経費処理をスムーズに行うために、一般的に法人カードの引き落とし口座は法人口座を指定するのです。
引き落とし口座に個人口座を指定できるケース
法人カードのなかには、コーポレートカードというものがあります。
コーポレートカードのなかには、個人口座を指定できる個人決済型のカードがあります。
つまりコーポレートカードの個人決済型カードであれば、法人カードでも個人の口座を指定できるのです。
次章ではコーポレートカードと個人決済型カードについて解説していきます。
「個人決済型」のコーポレートカードとは
コーポレートカードの概要と、会社決済型と個人決済型それぞれの違いについて解説します。
コーポレートカードとは
法人カードは以下2つに分類されます。
- ビジネスカード
- コーポレートカード
それぞれの特徴は以下のとおり。
ビジネスカード | カードの使用者が20名以下、中小企業や個人事業主向けのカード |
---|---|
コーポレートカード | カードの使用者が20名以上、大企業や中堅企業向けのカード |
コーポレートカードは、法人としてのカードに従業員用の追加カードが発行できるのが特徴です。
個人クレジットカードにおける、家族カードのようなシステムと考えて良いでしょう。
金融機関によっては、法人の規模や追加カードの枚数によって、ビジネスカードとコーポレートカード発行を分けています。
会社決済型と個人決済型
コーポレートカードの決済方法には、会社決済型と個人決済型があります。
会社決済型は引き落とし口座を法人口座で一括しているコーポレートカードです。
いっぽう個人決済型は、カードを使用した人それぞれの個人口座から引き落としになり、あとから経費として申請するタイプです。
引き落とし指定をする口座を【法人】か【個人】どちらを指定するかで、コーポレートカードの使い方やメリットも異なってくるのを覚えておきましょう。
次項でそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
個人決済型コーポレートカードのメリット
法人カードは法人口座に一括指定することで、経理処理をスムーズに行えるメリットがあります。
その一方、あえて個人口座を指定する個人決済型のコーポレートカードには以下のメリットを持っています。
- 法人カードだが個人利用できる
- 福利厚生として利用できる
- 不正利用を防げる
法人カードだが個人利用できる
個人決済型のコーポレートカードは、個人口座からの引き落としのため法人カードでも個人支払いに利用して問題ありません。
ビジネス用途でもプライベートでも、カードを分けず1枚のカードで自由に使えるメリットがあります。
福利厚生として利用できる
コーポレートカードの追加カードとして発行されても、コーポレートカードそのものの持つ付帯サービスは利用できます。
コーポレートカードに付帯している【空港ラウンジ利用可能】【ETCカード発行無料】などの付帯サービスを、従業員の福利厚生としても利用可能です。
また、コーポレートカードそのものがステータスの高い、年会費の高いものだった場合でも従業員は「年会費無料でステータスの高いカードを持てる」メリットを享受できるでしょう。
不正利用を防げる
個人決済型のコーポレートカードは、使った分のお金は従業員個人の口座から引き落とされます。
よって会社決済型のコーポレートカードのように、会社の資金を個人の目的で不正利用されるといったリスクが防げるのです。
また個人口座から引き落とされた経費は都度申請して経費処理をするため、経費の流れが分かりやすくなるといったメリットも得られるでしょう。
個人決済型コーポレートカードのデメリット
個人決済型のコーポレートカードは、個人口座指定だからこそ得られるメリットも多くあります。
ただしメリットばかりではなく、デメリットもあることを覚えておかなければいけません。
- 使用者個人の審査がある
- 経費管理にやや手間がかかる
使用者個人の審査がある
会社決済型のコーポレートカードは企業や法人そのものの信用情報が審査対象になるのに対して、個人決済型のコーポレートカードの場合、追加カードを使う使用者個人に対する審査もあります。
よって使用者個人のクレジットヒストリーに傷があるなど、信用がないと判断された場合は、発行されない可能性があるのです。
法人カードとはいえ、個人の信用情報が審査対象となるため必ずしも発行されるわけではないのを覚えておきましょう。
経費管理にやや手間がかかる
個人決済型のコーポレートカードは、個人の支払いとビジネスの支払いを1枚のカードで使えるメリットがあります。
ただしビジネス支払い、つまり会社経費として使った分は従業員から申請を受けて、都度経費として処理をしなければいけません。
経費処理の手間がややかかるようになる、さらに従業員単位で申請される経費処理を含めた追加カードの管理をしなければいけないデメリットがあります。
まさに経費を含め財務処理を問題なくこなせる人員やシステムが整っている、規模の大きな企業向けのカードと言えるでしょう。
法人カード導入のメリット
会社決済型でも個人決済型でも、法人カードとして導入すると得られるメリットは共通しています。
会社決済型や個人決済型を考える前に、法人カード導入を迷っている人も参考にしてほしい、法人カード導入のメリットをおさえておきましょう。
・ビジネスに役立つ付帯サービスが豊富
・福利厚生で社員に還元できる
会社の経費を一括管理できる
法人カードは、会社の経費に関わるものはすべて法人カードで決済します。
よって業務に関する支払いを一括化できるため、仕訳が楽になるのが最大のメリットです。
個人決済型の場合、個人口座分から経費として申請する手間はありますが、同一口座から法人分・個人分を分別して仕訳をする会計処理そのものがなくなります。
また法人カードのなかには、カードの使用状況を会計ソフトと紐づけできるものがあります。
自動で仕訳や項目が入力されるため、ますます会計処理における業務や時間が削減されて便利になるでしょう。
ビジネスに役立つ付帯サービスが豊富
法人カードは、ビジネス目的で作られたカードのため、ビジネスに役立つ付帯サービスが豊富にあるのも特徴です。
国内や海外の旅行傷病保険付きや空港ラウンジ利用可能、スーツケースの無料配送などのサービスは、出張の際にも便利です。
ほかにもビジネスの情報情報データベースが年会費無料で利用可能、指定の会計ソフトとの紐づけができるなどのサービスがついているカードもあります。
福利厚生で社員に還元できる
法人カードならではの付帯サービスは、そのまま従業員に還元できるのもメリットです。
たとえば経費の支払いで貯まったポイントを、福利厚生に還元するためにも使えます。
また社員に、個人決済型のコーポレートカードを持たせられます。
ビジネス用品購入の優待や出張手配の効率化など、社員のちょっとしたストレスを緩和したり、プチサポートができたりするので法人カードの導入はおすすめです。
引き落とし口座を個人口座にできる法人カード2選
ここからは引き落とし口座を、法人口座・個人口座に設定できる法人カードを2枚紹介していきます。
三井住友カード ビジネスオーナーズ | セゾンプラチナ・ビジネス・アメックス | |
---|---|---|
カードフェイス | ||
入会資格 | 満20歳以上の法人代表者、個人事業主 | 個人事業主・経営者をはじめ、安定して合収入があり、社会的信用を有するご連絡可能な方 (学生、未成年を除く) |
年会費(初年度) | 永年無料 | 無料 |
年会費(2年目以降) | 22,000円(税込) | |
還元率 | 0.5%~最大1.5% | 0.5%~1.0% |
追加カード |
19枚まで発行可能
|
最大9枚まで
※年会費3,300円(税込)
|
ETCカード | 550円(税込)※2 | 5枚まで無料 |
海外旅行保険 | 最高2,000万円 | 最高1億円 |
国内旅行保険 | – | 最高5,000万円 |
空港ラウンジ | – | 海外1,300ヶ所以上の空港ラウンジ |
国際ブランド |
|
アメックス |
詳細 |
※1 初年度年会費無料、2年目は年1回の利用で無料
それぞれ順番に解説していきます。
三井住友カード ビジネスオーナーズ
三井住友カード ビジネスオーナーズは、【個人事業主】と【中小企業代表者】を対象にしたカードで、以下2種類のラインナップがあります。
- 一般
- ゴールド
年会費無料の一般カードなので、はじめて法人カードをもつ方や、2枚目のサブカードとしても所持しやすいです。
次項では三井住友カード ビジネスオーナーズのおすすめポイントを紹介していきます。
三井住友カード ビジネスオーナーズのおすすめポイント
三井住友カード ビジネスオーナーズは以下3つおすすめポイントがあります。
- 特定の条件で還元率最大1.5%
- パートナー会員カードが19枚発行可能
- 業界最安値の手数料で支払い代行サービス利用できる
特定の条件で還元率最大1.5%
三井住友カード ビジネスオーナーズは、個人向けの三井住友カードと2枚持ちすると、特定の加盟店での支払いによって還元率が最大1.5%になります。
引用 : 三井住友VISAカード | 対象のご利用でポイント最大1.5%還元!
なお個人向けカードの2枚持ちをしなくても、ポイント還元率は常時0.5%です。
カードランクに関係なく常時0.5%の還元率が得られるため、特典が不要な方は一般カードでも充分お得に利用できます。
パートナー会員カードが19枚発行可能
三井住友カード ビジネスオーナーズは、パートナー会員カード(追加カード)を19枚まで発行できます。
一般的な法人カードでは、追加カードを十数枚発行ができないケースが多いです。
たとえば会社規模が大きくなり、営業や経理などたくさんの社員に追加カードを渡して、経費処理を簡略化したい企業にピッタリです。
追加カード発行枚数の多さは強みと言えるポイントです。
業界最安値の手数料で支払い代行サービス利用できる
請求書支払い代行サービスは、借り入れなしで最大約40日支払いを延長できるサービスです。
仕組みはクレジットカードでの支払いを受け付けていない取引先に対して、三井住友カードが代わりに振り込みをしてくれるという内容です。
請求書支払い代行サービスは、利用額3%の手数料が発生しますが、三井住友カード ビジネスオーナーズであれば2.7%に引き下げられます。
たとえば「案件を受注したけど支払いが重なって資金が足りないかも…」という事態の回避に使えます。
支払代行サービスは数多くありますが、発行したカード会社が提供しているのは安心です。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックス
セゾンプラチナ・ビジネスアメックスは、年会費22,000円(税込)で所持できるプラチナカードです。
「年会費が安い分サービス・特典が劣るのでは?」と感じるかもしれませんが、サービスや特典が劣っているわけではありません。
プラチナカードの名にふさわしい、充実した特典がたくさん付いています。
さらに申し込みから最短3営業日で発行できるのも、セゾンプラチナ・ビジネスアメックスのメリットです。
永久不滅ポイントについて
セゾンプラチナ・ビジネスアメックスは、月末の請求1,000円ごとに、永久不滅ポイントが1ポイント貯まります。
ポイントの期限切れを気にせず貯められるという点が、嬉しいポイントですよね。
なお貯まったポイントは、100ポイント以上あれば、商品への交換や支払いに充てたりできますよ。
たとえば航空会社のマイルに交換できるので、以下を参考にしてみてください。
- 【ANA】200ポイント → 600マイル(0.3%)
- 【JAL】 200ポイント → 500マイル(0.25%)
出張で飛行機の乗る方には、おすすめの支払い方法とポイントの貯め方の1つです。
JALマイルに交換すると還元率が1.125%
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードを持っている人は、SAISON MILE CLUBに登録すると、ポイントの代わりにマイルを貯められます。
ショッピングの利用金額に応じて、自動的にJALのマイルが貯まります。
なお同時に永久不滅ポイントも貯められるというメリットがあるのです。
- ショッピング1,000円(税込 )→ 10マイル
- ショッピング2,000円(税込 )→ 1ポイント
永久不滅ポイントは、2,000円(税込)ごとに1ポイントになりますが、ポイント交換の手続きをしなくても、自動的にJALのマイルに移行できるようになります。
ポイントを貯めてからマイルに交換するよりも、マイル還元率が高いため、はじめからマイルを貯めたいと考えている人にとってメリットが大きいです。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスには、上記の基本サービス以外にビジネス向けサービスや特典が豊富に提供されています。
しかしもっとも大きなメリットは、サービスが充実したプラチナカードであるにも関わらず、インビテーション(招待)なしで入会申込が可能な点です。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスのカード受け取りまでの流れ
申し込み~カードの受け取りまでは、以下4つのステップです。
- インターネット申し込み
- 申し込み確認の電話に出る
- 審査結果メールを確認する
- 郵送でカードを受け取り
申し込み確認の電話は、10:00~20:00の間に実施され、審査は最短即日で実施されます。
入力に不備がなかったり、電話にでれなかったりと審査に滞りがなければ、最短3営業日後にカードが発送されます。
通常22,000円(税込)かかる年会費が、初年度無料になるため、この機会にぜひ検討してみてください。
まとめ
法人カードの引き落とし口座は、個人口座指定もできます。
個人口座に指定された法人カードを従業員に持たせることは、そのこと自体がベネフィットとして受け入れられることもあるでしょう。
個人が発行できるクレジットカードに比べると、付帯サービスや限度額などが大きくなるからです。
ただし会社の経費を一括で管理できるという法人カードのメリットは薄れてしまいます。
どちらのメリットが会社にとってより好影響があるのか、判断して決済口座を決めるようにしてください。