法人カードで決済した場合、領収書ではその支払いがあったことを証明できません。
会社の経費を計上する際、とにかく「領収書」と思っているかたも多いかも知れませんが、クレジットカード決算は違います。
クレジットカード決済で領収書の代わりを果たすもの、それは「クレジット売上伝票」です。
「あの青やピンクのレシートが!?」と思われたかもしれませんが、それにはもちろんちゃんとした理由があります。
今回は法人クレジットカードで決済経費を証明するための書類について解説していきます。
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cardmania -
クレジットカード会社に26年の勤務歴あり。
カード会社勤務時代は督促業務、カード審査も経験しました。
クレジットカード会社に勤務していた経験を活かして、
公式サイトでは語られない審査の裏側などをお伝えしていきます!
法人カード決済を証明できる書類はクレジット売上伝票
法人がカード決済をした時に、必ず渡される伝票としてクレジット売上伝票があります。
法人カードを利用した時に、領収書の他に発行される伝票のことです。
このクレジット売上伝票が、決済をしたことの証明書として経費の計上に利用できるのです。
支払いを証明するのに必要な項目
消費税法第30条第9項に規定する請求書などに該当するためには、以下の5つが必要です。
- その書類の作成者の氏名又は名称
- 課税資産の譲渡等を行った年月日
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
- 課税資産の譲渡等の対価の額
- その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていること
クレジット売上伝票は、上記の5つの必要な項目がすべて記載されているわけではありません。
しかし、代用できるものが記載されていれば経費を支払った証明書類として認められるのです。
例えば、クレジット売上伝票には、書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称は記載されていませんが、消費税法により事業によっては記載されていなくてもいいと認められているものもあります。
以下は消費税法によって書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称を記載されていなくても良いと認められている事業です。
- 小売業
- 飲食店業
- 写真業及び旅行業
- 道路運送法に規定する一般乗用旅客自動車運送事業
- 駐車場業上記に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うもの
カード利用明細書は証明書にできない
カード会社から月に一回送られてくる利用明細書は、経費を支払った証明書類にはできません。
なぜなら、取引明細書は法人カードの発行企業が作成したものであり、決済をした店が作成したものではないからです。
カード決済と領収書の関係
法人が備品の購入などの経費を決済した場合、現金払いの場合は領収書が発行されます。
現金取引時の領収書は、税務調査上では大切な証明書となります。
一方、法人カードで決済された時に発行された領収書は、税務調査上での証明書としては認められません。
なぜなら、法人カードでの取引は、現金や有価証券などを受け取った事実がないためです。
このように、法人カードでの取引は信用取引のため、その場で現金や有価証券などの授受はありません
領収書が経費支払の証明になるポイントとしては、現金や有価証券の授受があった時だけなのです。
カード決算は信用取引
現金や有価証券で取引をした場合、受領した証明書としめて領収書が発行されます。
そして、領収書は、印紙税を払った正式な領収書として収入印紙が貼られます。
また、正式な領収書として認められませんので、印紙を貼る必要もないのです。
カード決済のように領収書発行が不要の場合やあっても正式な領収書として認められない場合は、領収書で支払いの事実を証明することができません。
ネット上で決済した場合
今やネットショッピングは個人や個人事業主では当たり前になっていますが、ビジネス用の法人カードでもネットショッピングで支払うケースはあります。
ネットショッピングでは、クレジット売上票は発行されません。
この場合経理担当者は、どのような書類を、経費を支払った証明書類にして経理処理をしているのでしょうか。
申込後の自動返信メールを保管しておくこと
ネット上での決済の場合クレジット売上伝票は届きませんが、申し込み後に利用控えが書いてあるメールが届くはずです。
このメールには、いつ、だれに、いくら支払ったかが記載されているので、印刷して保管しておいてください。
そのメールが決済の証明になります。
また、可能であれば先方に領収書の発行が可能か確かめておいてください。
もし発行可能であれば、領収書をもらっておくようにしましょう。
その他保管しておくべき書類
法人カードでの決済を経費処理して計上するためには、クレジット売上伝票が必要です。
そのため、クレジット売上伝票は、必ず保管しておく必要があります。
それに加え、経費処理の証明書にならない領収書などの書類も保管しておくと良いでしょう。
他にも、レシート、カード会社から月一で送られてくる利用明細書、見積書、発注書、納品書といった関連書類などは保管しておくべき書類です。
これらの書類は、経費処理の観点からいえば直接関係ないかもしれません。
しかし、後々証拠として使用する可能性もありますので、法人カードでの決済を経費処理するためには関連する書類はすべて保管しておきましょう。
法人カードで支払う経費とは
法人カードを使って経費を処理する時、どんなものでも経費にできるわけではありません。
ここでは以下のことについて見ていきましょう。
- 法人カードで経費にできるものはどんなもの
- 法人カードで個人の支出は経費にできるのか
法人カードで経費にできるものとは
法人カードで経費にできるものは現金で経費にできるものと特に違いはありません。
原則としては100%ビジネスに関係するものであれば経費として計上できます。
具体的に法人カードで経費にできるものとしては、たとえば以下のものが挙げられます。
- 事務用品などの消耗品
- 交際費
- 旅費交通費
これらのものであれば、法人カードで問題なく経費にできるでしょう。
ただし大前提として、事業に関わるものでなければ以上のものであっても経費にはできません。
事務用品は会社の事業などで利用していることが前提ですし、交際費は会社の関係者とのものに限定されます。
目的外利用は税務署に見られたときに経費として認められない可能性もあります。
特に交際費は不正がしやすい部分のため、税務署のチェックも厳しくなります。
「何の目的で経費利用したのか」この点を一度しっかり確認しましょう。
法人カードで個人の支出は経費にできるのか
先ほども説明したように、法人カードでは個人的な支出を経費として計上することはできません。
ただし法人と個人の両面で利用しているものであれば、家事按分として申告することで、経費として計上する方法もあります。
家事按分とは、個人と会社の両方で利用しているものをその利用する割合に応じて経費にすることです。
家事按分として、どのくらいの割合経費計上できるかはその個人が設定できます。
この時、その割合にした合理的な理由が説明できなければ、税務署に却下されてしまう可能性もあるため、しっかりと根拠のある割合で設定しましょう。
ただし家事按分として経費処理するのは手間がかかってしまいます。
そのため、できるのであれば家事按分として処理するのは避けたほうがよいでしょう。
まとめ
法人カードで決済したものを経費と証明するには、クレジット売上伝票を提出するようにしてください。
クレジット売上伝票が、現金で決済したときの領収書と同じ役割を果たしてくれます。
その他発行される書類は念のため保管しておき、どんな角度から見られても経費だと証明できるようにしておきましょう。
もしすべての経費精算を法人カードでできるなら、もう領収書を発行してもらう必要もなくなります。
経費精算を楽にするためにも、法人カードをまだ導入できていないなら、この機会に是非手に取ってその便利さを味わってみてください。