フリーランスとして働くということは、自らの収入に対して課される税金を、自らで確定申告して納めなければならないということです。
会社に属していた場合は、確定申告をしなくても税金を納めることができましたが、ひとりの個人事業主となった場合そうはいきません。
しかし、納税はもちろん国民の義務とはいえ、自分ひとりの力で稼いだお金の多くを税金に持っていかれるのは、なんだか損した気分になりますよね。
今回はそんな損をした気分を少しでも軽くしていただくために、フリーランスの方が自力でできる節税の方法を紹介します。
ここで紹介するのは、れっきとした節税の方法であって、怪しい脱税の方法ではありませんので、安心して最後まで読み進めてください。
フリーランスが納める税金とは
フリーランスが納める税金は以下の4種類です。
・住民税
・個人事業税
・消費税
まずはこれらがどんな税金なのかご紹介します。
所得税
みなさんがフリーランスとして仕事をして、それによって得た所得に対して課される税金のことを「所得税」と言います。
会社員の方でも毎月給料から天引きされているので、イメージしやすいでしょう。
フリーランスの場合は、特別な控除を受け、事業のために負担した費用を経費として計上することで課税される所得(課税所得)を減らすことができます。
所得税の納付期限は毎年3月15日です。
住民税
都道府県や市区町村に住んでいることに対して課される税金が「住民税」です。
住民税は、「所得割+均等割」で計算されます。
住民税 | |
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所得割 | 均等割 |
課税所得の10% | 一律4,000円 |
所得割は課税所得の10%、均等割が一律4,000円です。
住民税は所得税の確定申告書を元に算出されます。
所得税の確定申告が必要ない場合、住民税のみの確定申告が必要になります。
個人事業税
フリーランスが事業を行っていることに対して課される税金を「個人事業税」と言います。
年間の所得が290万円を超えた場合、その超えた部分に3~5%の税率が適用されます。
業種によって税率が変わる少しややこしい税金です。
例えば、あんまやマッサージを業務としている場合は3%で、畜産業や水産業を営んでいる場合は4%の税率が適用されます。
その他ほとんどの職種は5%です。
所得税の確定申告を元に算出され、納期は8月と11月の年2回です。
消費税
原則として、2年前の課税売上高が1,000万円を超える場合に消費税が課されます。
消費税は、売上が1,000万円を超えた場合に適用されるため、税額が大きくなる傾向にあります。
また、原則赤字になっても支払わなければならない税金です。
課税売上高が1,000万円を超えそうだという場合は、あらかじめ準備金を用意するなどしましょう。
フリーランスができる3つの節税の方法
フリーランスになったらなるべく節税して納める税金を減らしたいと思いますよね。
課税所得は以下の計算式で算出されます。
つまり、「控除額」もしくは「経費」を大きくすれば、課税所得は小さくなり節税に繋がるということです。
フリーランスの方に実践してもらいたい節税方法は3つです。
②適用される控除はすべて申請すること
③開業届を出し、青色申告で確定申告をすること
順番に解説していきます。
経費として計上できる支出とは
経費とは、確定申告で使う勘定科目のことで、事業に関連したものを経費として計上できます。
代表的な勘定項目には以下のようなものがあります。
勘定項目 |
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この他にも経費として計上できる項目はありますので、迷ったら税理士などに相談しましょう。
家事按分とは
家事按分とは、ある支出が生活費・事業費両方の側面を持っている場合、事業で使った分を経費として計上することを言います。
自宅と仕事場が一緒の場合、家賃や光熱費は【生活費】と言うこともできますが、事業に関連する【経費】とも言えるでしょう。
そこで【家事按分】を行い、合理的な基準で家賃などを生活費と経費に分ける必要があります。
家事按分をすることで、生活費の一部を経費として計上できるため、節税に繋がります。
家事按分をするための按分比率は、自宅における仕事環境の割合や、仕事に使われているコンセントの数・通信費などから、個人事業主が自ら決めることができます。
ただしあとあと税務署などから説明を求められる場合があるので、明確な方法で按分比率を決めましょう。
見落としがちな経費
勘定項目は膨大にあるため、確定申告をする際に見落としてしまうことがあります。
見落としがちな経費の代表例には、以下のようなものがあります。
・自宅事務所の減価償却費
・貸倒引当金
中でも「貸倒引当金」は、特に見落としがちな経費です。
取引先の倒産などのリスクに備えて計上される経費で、青色申告をしている個人事業主のみに認められている特典なので、忘れないようにしてください。
個人事業主用カード・法人カードを活用
「個人事業主用カード」「法人カード」というものがあり、事業を始めるに当たって作る方もいます。
事業専用のクレジットカードを作る最大のメリットは、経費の管理が楽になるという点です。
プライベートでも使用しているカードで事業に関する支払いをすると、確定申告をする際にどの支払いが経費として計上できるのか分からなくなってしまいます。
法人カードを作り経費の支払いを統一することで、経費精算の手間を省くことができます。
節税対策になる所得控除の種類
国税庁のHPには14種類もの控除が紹介されています。
- 基礎控除
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄付金控除
- 障害者控除
- 寡婦(夫)控除
- 勤労学生控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
基礎控除
所得のある人すべてが対象となる「基礎控除」は、もっとも一般的な所得控除です。
控除金額は一律38万円となります。
雑損控除
自然災害や盗難・横領によって、個人資産が損害を受けた場合、「雑損控除」を受けられます。
不慮の損害に対する控除ということです。
ただし、詐欺・恐喝による個人資産の損害には適用されません。
医療費控除
医療費が年間10万円を超えると、超えた部分の実費分が「医療費控除」として控除されます。
ただし、美容目的などには適用されません。
社会保険料控除
社会保険料を納めた場合、その全額が「社会保険料控除」として控除されます。
社会保険とは、健康保険・国民健康保険・厚生年金・雇用保険などを指します。
小規模企業共済等掛金控除
個人事業主でも退職金を受け取れるようになる「小規模企業共済」という制度があります。
その掛金を支払うと、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として控除されます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)について
また、近年小規模企業共済等掛金控除として注目を集めているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。
iDeCoとは、毎月決まった掛金を自分で設定し積み立て・運用しながら、60歳以降にそれを受け取る仕組みです。
このiDeCoにおいて拠出した掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。
つまり、将来受け取るお金を確保しつつ、節税対策にもなるということです。
生命保険料控除
フリーランスの場合、民間の生命保険に加入する方も多いです。
その場合に支払った保険料が「生命保険料控除」として控除されます。
保険の種類や加入した時期によって控除額が決まります。
地震保険料控除
地震や津波に備えて地震保険に入った場合、その支払った保険料が「地震保険料控除」として控除されます。
控除額の上限は5万円です。
寄付金控除
国や地方公共団体・特定の法人などに寄付をした場合に適用されるのが「寄付金控除」です。
ふるさと納税について
寄付金控除で近年注目を集めているのが「ふるさと納税」です。
ふるさと納税による控除額は「納税額-2,000円」となります。
つまり2,000円の負担でふるさと納税における返礼品を受け取ることができる、ということです。
ただし、収入額や家族構成によってふるさと納税には上限額が定められています。
上限を超えて納税をした場合、負担は2,000円以上となりますので注意してください。
障害者控除
障害のある方は、その障害の程度によって「障害者控除」を受けることができます。
身体的・精神的障害すべてを含んでいます。
寡婦(夫)控除
母子家庭・父子家庭を支援するため、「寡婦(夫)控除」という制度があります。
控除額は、27万円(特定の寡婦に当てはまると35万円)です。
勤労学生控除
仕事をしながら学生をしている場合、「勤労学生控除」を受けられます。
ただし、所得が65万円以下の場合に限られ、基礎控除と合わせて税金が0円になります。
扶養控除
「所得が38万円以下の16歳以上の親族」を扶養している場合、「扶養控除」を受けられます。
控除金額は、親族の年齢によって決まります。
配偶者控除
所得が38万円以下の配偶者がいる場合、「配偶者控除」を受けられます。
後述する基礎控除の恩恵を受けられない人を保護するための制度で、控除額は38万円です。
配偶者特別控除
配偶者の所得が38万円を超えてしまっても、76万円未満であれば「配偶者特別控除」を受けられます。
控除額は、配偶者の所得に応じて決まります。
青色申告で節税
開業届を出してフリーランスになる際、確定申告の方法として「白色申告」と「青色申告」の2種類から選ぶことになります。
両者の違いについて簡単に説明すると、以下のようになります。
白色申告 | 比較的簡単に確定申告できるが、青色申告で受けることができる特典を受けられない |
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青色申告 | 手続きが少し複雑になるが、特典があり節税に繋がる |
この青色申告で受けられる「特典」の1つが、「青色申告特別控除」です。
具体的には、青色申告をすることで最高65万円の控除を受けることができる制度です。
控除額が増えるということは、課税所得が減るということに繋がります。
青色申告ケーススタディ
青色申告特別控除について、具体例を用いて説明します。
総収入が450万円、経費が100万円、控除額が50万円というケースで考えてみましょう。
課税所得:450万円-(100万円+50万円)=300万円
課税所得:450万円-(100万円+50万円+65万円)=235万円
このように、課税所得に大きな違いが生まれます。
この金額を元に算出される所得税額は以下のようになります。
所得税額:300万円×0.1-97,500円=20万2,500円
所得税額:235万円×0.1-97,500円=13万7,500円
税額の差は65,000円です。
また、先ほど説明した住民税なども上記の課税所得に基づいて決まります。
そのため、青色申告をすることで全体的な節税に繋がります。
法人化による節税
フリーランスでも個人事業主ではなく、事業を「法人化」することで節税に繋げることもできます。
法人化することで、今まで所得税と呼んでいたものが「法人税」に変わります。
法人税は税率がほぼ一定のため、課税所得によっては大きな節税になる場合も。
ただし、設立登記などにお金がかかりますし、所得が低いと個人事業主より負担が大きくなってしまうこともあります。
法人化する際には、今後の事業の見通しなど将来を見据えた視点が必要です。
まとめ
フリーランスが自力でできる節税対策は3つあります。
①開業届を出し、青色申告で確定申告をすること
②適用される控除はすべて申請すること
③経費に計上できるものはすべて経費にすること
まずは経費に計上できるものをしっかりと把握して、確定申告時にプライベートな支出と経費を仕訳できるようにしておくことが大事です。
その際には法人カードを利用することで、仕訳が簡単になります。
それだけでなく、ポイントサービスや付帯サービスもりようできますので、節税以外にもメリットがあります。
まだ法人カードを持っていないのなら、確定申告に備えてビジネス用に1枚用意しておくのがおすすめです。