PR
2023/10/25

企業会計には減価償却という会計用語があります。難しい言葉ですね。

しかし最初から難しい話をしても頭が混乱してしまうので、ここは簡単な事例で減価償却のイメージを説明します。

消しゴムを思い浮かべて下さい。消しゴムは使えば使うほど減っていきますね。

しかし消しゴムが減る一方で、消しゴムは不必要な文字や図を消すことができます。つまり何かを消すという本来の目的を果たしながら消しゴムは形を変えていくのです。

減価償却という考え方はこの消しゴムの変化によく似ています。

今回の記事ではその減価償却を取り上げ、詳しく解説します。

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
当サイトを運営している嶋崎と申します。
わたしは経営の経験はありませが、サイト運営に携わり約2年が経過するなかで、事業主のお金の悩みは特有であることを勉強してきました。
たとえば事業主へ実際にインタビューをしたり、実際にセミナーに参加したりするなどして、資金調達の流れやどのようなときにお金の不安を感じるのかを勉強しています。
資金繰りの悩みを解決するためのサービスをすべてを網羅するのは大変です。
一から資金繰りの悩みを調べずとも、「ビズローンで解決できた」が叶うように、全力でサポートします。

減価償却とは?

減価償却とは、時間の経過およびその使用により固定資産がその価値を減少させながら、同時にその固定資産の当初の取得価額を各々の資産の耐用期間で計算して、費用に転換して計上していく会計処理の事をいいます。

この会計処理は国税庁が管理している各種税法のうち、法人税法の下で管理されています。

また会計期間は通常事業年度とも呼ばれ、企業会計では財務諸表(貸借対照表・損益計算書等)を作成する対象期間の事を指しますが、減価償却処理もこの中で行われます。

一般的に法人・個人事業主とも減価償却処理ができ、減価償却費は必要経費に計上できるので、減価償却処理の巧拙が節税や利益につながります。

一方減価償却処理をする事業主はその事業先に償却処理に必要な帳簿を備える必要があります。

またその耐用年数はその固定資産の実際の耐用年数でなく、法律で決められた固定資産取得の耐用年数表によって計算されます。
※耐用年数表や耐用年数計算は下記の【減価償却資産の種類】を参照

減価償却対象資産の種類

固定資産には種類があり大きく分けて2つに分類されます。

有形固定資産

ただのビル

有形固定資産には形のあるものが含まれ、建物、建物付属設備、機械装置、構築物、車両・運搬具、工具、器具・備品・農業用の牛・豚など、事業用資産がそれにあたります。

無形固定資産

無形固定資産は形のない償却資産であり、漁業権、特許権、商標権、など17種類にわたります。

なお無形減価償却資産の耐用年数表については、国税庁にもまとめられた一覧表が確認できないので、個別に調べる必要があります。

以上のように、減価償却資産は使用や経過年数でその資産の価値が減少していきますが、一方で使用や年数でその価値が変わらないものもあります。

例えば、土地、骨とう品、絵画などがそれに該当しますが、むしろ物によっては後で逆に資産価値評価額で上昇する可能性すらあります。

このようなものは償却資産としては一般的に適さないので、通常減価償却資産の対象からは省きます。

減価償却の方法には?

減価償却の種類は主に定額法と定率法に分かれます。

また別に生産高比例法と呼ばれる減価償却方式があります。

この生産高比例法は主に自動車や航空機など、その利用量に比例して計算できるものに適用されてきました。

しかしこの方式は平成19年3月31日以前に取得した償却資産に適用され、以後取得された償却資産については、現在全て定額法か定率法で償却するように税制改正で変更されています。

もうひとつ、減価償却の方法には級数法と呼ばれる方法がありますが、これは現在税法で減価償却の計算方法に使えないようになっているので解説しても意味がなく、そのため本記事では省略します。

そのため、以下では定額法および定率法について詳しく説明します。

定額法

定額法とは文字通り、償却資産において当初の取得額を法定耐用期間で均等に分けて、一定額で費用配分していく償却方法です。

例えば営業車両を購入費用100万円で調達し、4年で償却するなら毎年25万円ずつ費用化していくイメージです。

また個人事業主の場合は、通常この定額法を償却方法とすることが基本となっています。

定率法

定率法とは、償却資産を毎年定率で償却する方法で、毎年の償却後の残存価額に償却率を掛けて当該年度の償却額を計算します。

償却後の残存価額に償却率を掛けて計算するため、毎年の償却額は残存価格の減少に合わせてどんどん小さくなる特徴があり、定額法に比べると定率法は初期に大きく償却できるメリットがあります。

償却資産のうちコンピューターなど、その進歩の度合いが早く数年で設備投資の更新が必要な償却資産の場合には適した償却方法です。

また中古の営業車両など中古資産を購入した場合も、購入したその年度決算で大きな額の収益が見込める場合、償却方法で定率法を採用すれば、大きな額の償却が可能なので節税につながります。

一般的にはこの定率法は中小企業等の法人で活発に利用されています。

また現在は定額法・定率法に共通する償却ルールがあり、償却が完全に終わった時点でその償却資産の残存価値として必ず「1円」を帳簿に残しておかねばなりません。

そして将来その資産が耐用年数も過ぎて廃棄等で償却資産グループから除く時に残価の1円を処理することになります。

これは後で計算事例でも使いますのでよく覚えておいて下さい。

定額法・定率法の計算方法

平成19年4月1日以降に取得された償却資産の定額法と定率法による計算式と具体的な事例を上げて解説します。(平成24年4月1日に定率法のみ再度若干の改正がありましたが、この章の計算例は定額法・定率法とも平成19年4月1日以降の改正に合わせています)

定額法の計算方法

定額法の計算式は「取得価額×定額法の償却率」です。

具体的な計算例です。

・減価償却資産 取得価額100万円
・耐用年数10年
・償却率 0.100(10%)

定額法における償却額の推移

【1】1年目の償却費の額 100,000円(=1,000,000×0.100)
【2】2年目~9年目の償却費の額 100,000円(=1,000,000×0.100)
【3】10年目の償却費の額 99,999円(期首帳簿価額−1円)

定率法の計算方法

定率法の計算式は「未償却残高×定率法の償却率」です。ただし償却途中で毎年の償却額が「償却保証額※」に満たなくなった年分以降は毎年同額となります。
※償却保証額とは、資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率を掛けて計算した金額

具体的な計算例です。

・減価償却資産 取得価額100万円
・耐用年数10年
・償却率0.200(20%)
・改定償却率0.250(25%)
・保証率0.06552 (6.552%)
・上記保証率を掛けて償却保証額は 65,520円(=1,000,000×0.06552)

定率法における償却額の推移

【1】1年目の償却費の額 200,000円(=1,000,000×0.200)
【2】2年目~6年目の償却費の額 (1,000,000−前年までの償却費の合計額)×0.200
【3】7年目の償却費の額 65,536円(=改定取得価額262,144×0.250)
※7年目のここがややこしいのでしっかり計算についてきてください。
※この改定取得価額262,144円とは(1,000,000−前年までの償却費合計)です。
※調整前の償却額の計算をすると、(1,000,000−前年までの償却費合計)×0.200=52,529円となり、当初に決めた償却保証額65,520円に足りません。
そこで改定取得価額262,144円に0.250を掛けた額を新たに出して7年目の償却費の額を算出します。

【4】8年目~9年目は同様に、65,536円(=改定取得価額262,144×0.250)
【5】10年目の償却費の額 65,535円(=期首帳簿価額−1円)

なお定額法および定率法の償却率は国税庁HPからも算出できます。

「少額減価償却資産の特例」とは?

減価償却の処理で、青色申告者※であるフリーランスや個人事業主、中小企業(資本金1億円以下)が受けられる「少額減価償却資産の特例」という制度があります。

一方、これは白色申告者のフリーランス・個人事業主や大企業は利用できません。

これは普通の減価償却以外に、30万円未満の少額償却資産のある場合、全額を一括で償却(会計上の損金算入)、またはその一部を3年間で均等に償却できる制度です。

さらにその償却できる資産の合計額の上限は事業年度中に300万円までとなっています。また償却資産は新品・中古品等の違いは関係ありません。

そこで、取得原価が30万円以下の償却資産の場合、金額によって色々な償却方法が選択できます。

青色申告とは、個人事業主が決められた法定帳簿をきちんと備えて記帳することを条件に、税務署から税金や手続きの面で色々な特典を受けられる制度のことをいいます。

特例を使って全額を損金処理した場合、それらの償却資産は基本的に固定資産台帳に記載の必要があります。

なぜならこの処理はあくまで特例による会計上の話に過ぎないからです。

また同時に市町村に申告する必要があり、固定資産税評価額の対象となります。

ただし金額により色々な処理方法が選択できるので以下で詳しく解説します。

まず取得原価が10万円未満の場合、法人・個人等の対象者に関わらず、その全額を消耗品費として経費処理できます。

さらにこの場合、償却資産を固定資産台帳へ載せる必要ないので、固定資産税も対象外となります。

取得価額が10万円以上20万円未満の場合、使える方法には

【1】通常通り減価償却処理
【2】一括償却資産として事業年度で全額償却
【3】償却処理を3年間に分けて分割償却

の3通りあります。

「少額減価償却資産の特例」を使った場合、この方法では償却資産を固定資産台帳へ載せる必要がありますが固定資産税は対象外です。

取得価額20万円以上30万円未満の場合、同様に

【1】通常通り減価償却処理
【2】一括償却資産として事業年度で全額償却
【3】償却処理を3年間に分けて分割償却

の3通りあります。

「少額減価償却資産の特例」を使った場合、この方法では償却資産を固定資産台帳へ載せる必要はありますし、固定資産税も課税されます。

さらに償却資産の取得価額が30万円を超えると全て減価償却資産として通常の償却処理が必要になってきます。

この処理についてはかなり内容がややこしいので、どの償却方式を利用するかはその青色申告者または法人の経営状態や経営者の考え方によって異なってきます。

できれば顧問契約を結んでいる税理士に相談して適切な方法を選んでもらいたいと思います。

ビジネスローン・カードローンと減価償却

減価償却の最終目的は、事業年度を超える耐用年数を持つ償却資産、例えば機械や設備等に充てた購入費用を、法定耐用年数で適切に費用化することで、投資額の収益率をきちんと把握することです。

また減価償却処理そのものは現金出費を伴わない会計処理に過ぎないので、経費処理することで事業の内部に資金が貯まるようになります。

金融機関が融資の返済財源を計算するにあたり使う物差しは、損益計算書から導かれるキャッシュフローですが、そのキャッシュフローは通常、「経常利益(営業利益+営業外利益−営業外費用)+減価償却相当額」で計算します。

事業者がビジネスローンやカードローンを申込した場合、金融機関はこの方法でキャッシュフローを計算してその融資が返済可能か判断するので、減価償却相当額が決算書に盛り込まれているかどうかはとても大事なポイントになります。

ビジネスローン会社イメージ

事業者の中には、決算書が赤字になることを恐れて減価償却せず未償却のまま当期利益で黒字を出している業者もいますが、これはほめられたことではありません。

むしろ償却をしないことで金融機関としてはなにかまずことがあるのではないかとその事業主に余計な疑いを持ってしまいます。

それより、仮に当期利益が赤字になっても、それを金額で上回る減価償却相当額が同時に計上されていれば、金融機関でキャッシュフローを計算する時にきちんと調整してくれます。

そのほうが未償却で決算書を出すより事業主に対するイメージがかなり良くなります。

このように融資の判断と減価償却は強い関連があるので、事業主としても数字に対する苦手意識を捨て、ぜひ減価償却の基本をマスターし、きちんとした減価償却処理をするよう努力してもらいたいと考えています。

関連記事