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2023/10/25

会社経営者や個人事業主にとって決算書や所得税の確定申告書を作成する上で、減価償却の計算は避けて通ることはできません。
事業に必要な資産を持っている限り減価償却が必要となるからです。

これから事業を始める人や始めたばかりで、まだ減価償却の知識がない事業主は、正確な減価償却の知識を身につける必要があります。

今回は減価償却の基本から計算方法までを解説します。

ライター嶋崎の実物写真

【ライター】嶋崎
当サイトを運営している嶋崎と申します。
わたしは経営の経験はありませが、サイト運営に携わり約2年が経過するなかで、事業主のお金の悩みは特有であることを勉強してきました。
たとえば事業主へ実際にインタビューをしたり、実際にセミナーに参加したりするなどして、資金調達の流れやどのようなときにお金の不安を感じるのかを勉強しています。
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減価償却とは?

減価償却は簡単にいえば、資産をその価値に応じた金額で経費として処理して課税の対象外にすることです。

減価償却にはいろいろなルールがあるので、まずはその基本的なルールを理解しましょう。

なぜ減価償却をするのか?

同じ事業で利用する資産でも高額な資産の場合、1回の会計年度で経費として処理するとバランスが悪くなります。

また、バランスの問題だけでなく高額資産は長期にわたって使用するので、事業用として使用している期間で処理するのが合理的です。

そのため資産が使用できる期間を法律で定めて、その期間で分割して経費計上するというのが減価償却の基本的な考え方です。

この期間を「法定耐用年数」と呼んでいます。

例えば200万円で購入した事業用車両の耐用年数が4年とします。

これを毎年50万円ずつ4年間で減価償却するのが基本となります。

ただし減価償却の計算方法は2種類あるので、後で詳しく解説しましょう。

減価償却の対象

資産は大きく分けて固定資産と流動資産に分けることができます。

固定資産

有形固定資産 土地、建物、建設仮勘定、工具器具備品、機械装置、車両運搬具
無形固定資産 営業権、特許権、実用新案権、意匠権、著作権、商標権、漁業権、借地権、鉱業権、ソフトウェア固定資産
流動資産 現金、預金、売上債権(売掛金、受取手形、有価証券など)、棚卸資産、その他(貸付金、前渡金、未収金など)

上記の中で減価償却の対象となるのは、「一定以上の金額で時間の経過によって価値が下がる固定資産」と定義できます。

土地は固定資産ですが価値はほとんど一定なので、減価償却はできません。

もっとわかりやすい定義をすれば、「法定耐用年数表に記載されている固定資産」ということになります。

法定耐用年数は減価償却のためのものなので、対象資産すべての耐用年数が記載されています。

減価償却の対象かどうか迷ったら法定耐用年数表で確認するほうが正確です。

減価償却の対象外

減価償却の対象となる固定資産でも、その取得価格によって対象外とされているものがあります。

取得価額10万円未満 一括で損金計上できるので減価償却は不要
取得価額10万円以上20万円未満 法定耐用年数に関係なく3年に分けて損金計上ができる
取得価額30万円未満 青色申告者のメリットとして30万円未満であれば一括で損金計上ができる

上記でわかるとおり取得費が30万円以上であれば必ず減価償却が必要となります。

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法には2つの方法があります。

定額法と定率法がその2つですが、何度か改正によりルールが変わっているので、これから資産を取得する場合に適用される最新の計算方法を解説します。

定額法

定額法は取得価額(購入価額)を単純に法定耐用年数で割って計算する簡単な計算方法です。

また基本的に建物や建物附属設備及び構築物に関しては定額法で計算するよう法律で定められています。

取得価額100万円、法定耐用年数5年(償却率0.2)の資産を減価償却する計算方法は次のとおりです。

1年目・・・1,000,000円✕0.2=200,000円
2年目・・・1,000,000円✕0.2=200,000円
3年目・・・1,000,000円✕0.2=200,000円
4年目・・・1,000,000円✕0.2=200,000円
5年目・・・1,000,000円✕0.2=200,000円-1円=19,999円

基本的には減価償却は均等になりますが、最後の年度だけは1円を残して償却します。

これを「1円計上」といいます。

減価償却が終了しても資産を事業用として使用する限り、事業用資産が存在しています。

1円を残すのは資産がまだ残っているのを忘れないようにする「備忘価額」を帳簿に残すという意味があります。

定率法 

定率法は「旧定率法」「250%定率法」「200%定率法」と、3段階で改正となっています。

後者2つは倍額定率法とも呼ばれています。

平成24年4月1日以降に取得した資産に関しては200%定率法が適用されるので、200%定率法の計算方法を解説します。

定率表では償却率のほかに「改定償却率」と「保証率」を使用するので定額法よりも複雑な計算方法となります。

定額法と同じ条件で計算してみましょう。

▼条件
・取得価額100万円
・法定耐用年数5年
・償却率0.4
・改定償却率0.5
・保証率0.10800

まず最初に取得価額✕保証率によって償却保証額を計算します。

1,000,000円✕0.10800=108,000円

償却額の計算中にこの保証額を下回った場合は、償却率ではなく改定償却率を使用します。

年数 計算式 未償却残高(残存価額)
1年目 1,000,000円✕0.4=400,000円 600,000円
2年目 600,000円✕0.4=240,000円 360,000円
3年目 360,000円✕0.4=144,000円 216,000円
4年目 216,000円✕0.5=108,000円 108,000円
5年目 108,000円-1円=107,999円 1円

そのまま計算していくと4年目の償却金額は216,000円✕0.4=86,400円となり、保証額108,000円を下回ります。

そのため4年目は改定償却率を使用して償却額を計算します。

それ以降、償却額は一定ですが最終年度は定額法と同様に1円計上します。

定額法と定率法の選択

定額法と定率法には計算方法が簡単・複雑という以外にもメリット・デメリットがあります。

基本的に建物とその付属物は定額を使用する義務がありますが、それ以外の計算方法が選択できる資産ではどちらを利用するといいでしょうか?

定額法は減価償却額が一律、定率法では初年度が最高額となり年々減少していきます。

このことから、例えば会社設立時に取得した固定資産は高額になるので、創業から売上の少ない数年間は節税したいところです。

高額な資産を定額法で計算すると減価償却率が大きくなるので節税効果が期待できます。

このように経費を増やしたい事業年度は定率法を使用するといった使い分けをするといいでしょう。

また法定耐用年数が短いものは原則的に定率法を使用するほうがお得です。

定額法のメリットは長期間同じ減価償却額となる点ですが、法定耐用年数が短いとそのメリットが少ないからです。

なお、個人事業主が定率法を使用する場合は、事前に管轄税務署への届け出が必要なので注意しましょう。

建物の減価償却

会社の事務所や店舗を購入したり、不動産賃貸業をしたりする場合には建物の減価償却が必須となります。

定額法が原則なので計算自体は簡単ですが、構造別の耐用年数など他の資産よりも注意する点が多いので個別に解説します。

減価償却の対象となる金額

建物の減価償却費計算の基本となるのは、他の資産と同様に取得原価、つまり購入価格が基本となります。

建物価格には時価がありますが、実際の購入価格は時価と大きく違う場合があります。

本来の建物の正しい評価をするという点では時価で評価するのが正しいですが、時価も絶対的な基準はないので操作ができてしまいます。

そのため最も客観的に判断ができる売買価格を基準としています。

新築物件の計算方法

建物の耐用年数を調べるためには、まず建物の構造を知ることが必要です。

RC(鉄筋コンクリート)– 47年
重要鉄骨————— 34年
軽量鉄骨————— 27年
木造——————– 22年

新築の耐用年数は上記のとおりで、火災による喪失の可能性が低いほど耐用年数期間が長くなっています。

新築した建物の構造を知るには建物の登記簿謄本を取得するといいでしょう。

登記簿には建物の種類、構造、床面積などが記載されています。

5,000万円で新築したRC構造建物(耐用年数47年償却率0.022)の減価償却費は次のとおりです。

1~45年目 50,000,000円✕0.022=1,100,000円
46年目   500,000円-1円=  499,999円

新築の場合は法定耐用年数の計算は不要ですが、中古建物の場合は経過年数によって耐用年数が違うので計算が必要です。

中古物件の計算方法

中古資産のイメージ

法定耐用年数表に記載されている建物の法定耐用年数は新築用の耐用年数です。

中古物件を購入した場合は新築からの経過年数を差し引いて法定耐用年数を算出する必要があります。

その場合は2つのケースが考えられます。

すでに法定耐用年数を経過した建物

この場合、価値はゼロではなく新築建物の法定耐用年数✕20%が中古建物の法定耐用年数となります。

端数が出た場合は万単位で切り捨てしますが、2年未満となる場合の法定耐用年数は2年とします。

法定耐用年数を経過していない場合

・(法定耐用年数-経過年数)+経過年数 × 0.2
  または
・法定耐用年数 - 経過年数 × 0.8

法定耐用年数が残っている場合は上記の計算により中古建物の法定耐用年数を算出します。

法定耐用年数30年、経過年数10年で計算すると、

(30-10)+10×0.2=22年
30-10×0.8=22年

となり、どちらの計算式でも同じ結果になります。

自分が覚えやすい計算式で算出しましょう。

建物の付属設備

建物の減価償却費を計算するときには、建物と建物の付属設備を分けることが大切です。

建物附属設備の耐用年数は建物とは大きく異なるので、まったく別であると考えましょう。

法定耐用年数が設定されている建物附属設備には下記のものがあります。

用途 細目 耐久年数
アーケード・日よけ設備 主として金属製のもの
その他のもの
15年
8年
店舗簡易装備   3年
電気設備(照明設備を含む) 蓄電池電源設備
その他のもの
6年
15年
給排水・衛生設備、ガス設備   15年

これらを建物と同じように減価償却してしまうと、短期で償却できるものがかなり長期化してしまうので十分注意しましょう。

まとめ

減価償却費の計算は事業用固定資産を持っている事業者は、所得申告するまでに必ず必要な知識となります。

特に個人事業主は計算方法と併せて減価償却不要な特例についても覚えておきましょう。

また、赤字で利益がなければ減価償却しないという事業者もいますが、減価償却しなかった分残高が残り、除却するときの除却損が増えてしまいます。

基本的には赤字でも減価償却をするのが望ましいでしょう。

初めて申告や決算する事業者は基本に忠実にすることが大切です。

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